「ねえ、ゴーシュの次のお休みっていつ?」

ハチノスからの帰り道、私はゴーシュと一緒に歩いていた。

ちなみに、さっきした質問は、あまりにも重ならない休日に耐えかねて、ついにはゴーシュが休みの日に合わせて、私も休みを取ろうと思い至ったからだ。

「しばらくありませんよ」

「え?」

しかし、ゴーシュの答えは無情だった。しばらく休みがないって事は、ずっと働き続けるという事で。

「そんなに働いて大丈夫なの?」

「館長やアリア・リンクにも同じ事を言われました」

思わず心配になり、私がじっとゴーシュを見つめると、彼は困ったように笑った。

アリアさんの名前が出てきた事で、私の内面がざわつく。いくらゴーシュが私と付き合っているとは言え、やっぱり彼の中でアリアさんの存在は大きい。しかも、私より先に心配してる事を伝えてたなんて…。

「館長もアリアさんも、ゴーシュの事を本当に心配してるんだよ?」

私は落ち込んだ気持ちを隠して、明るく言葉を紡ぐ。きっと、私の心配だとゴーシュには届かない…。

「リーシャは、僕の事を心配してくれないんですか?」

拗ねたような口調のゴーシュの言葉を聞いて、私の口は勝手に動いていた。

「私だって!私だって…、いつもゴーシュの事を心配してるよ。もちろん、ゴーシュは私なんかよりも優秀だし、私も信じてる。でもね、ゴーシュが疲れている姿を見ると、不安で心配になるの。大好きな人のそんな姿、見ていられないよ…」

「リーシャ…」

これは、いつも私が抱えている心配と不安だった。特に、ここしばらくのゴーシュはかなり働きすぎな気がするよ…。こうして、一緒に帰る事すら少なくなってきているのに、気づいてるのかな?

「だから、周囲の人の心配も考えてよ。私だけじゃない。館長やアリアさんはもちろん、シルベットだって、絶対に心配してるんだから」

私はゴーシュに切々と訴えた。以前に、自分のこころと体を酷使して平気じゃないはずなのに、大丈夫ですよと疲れたように笑う彼を見た事がある。それは、見ているこっちが切なくなってしまうもので…。

もうやめて。お願いだから、それ以上がんばらないで。そう言いかけて、やめた。言ってしまったら、それはきっと彼の行動を否定する事になりかねなくて…。だから私は、いつも心配している事を伝えるだけだった。

「そんなに心配しなくても、僕は大丈夫ですよ、リーシャ。また仕事が落ち着いたら、休みを取りますから」

「約束だからね?」

私を宥めるようににっこりと微笑んだゴーシュに対して、私は小指を差し出した。

「もちろんです」

お互いの小指を絡めて、約束を交わす私達。絡まった小指の感触がくすぐったくて、笑いが零れる。

「じゃあ、今度のお休みは私も合わせて休み取るから、一緒に甘いものでも食べに行こうよ。ゴーシュのおごりで」

「僕のおごりですか?」

「もちろん。今度のお休みが楽しみだね!」

きょとんと首を傾げるゴーシュに、私はにこにこと笑う。いつも心配してるんだから、これぐらいは要求してもいいよね?

「惚れた弱みですし、仕方ないですね」

ゴーシュはそう言って、やれやれとため息を吐いた。顔を見れば、優しく笑ってて。私は嬉しい気持ちのまま、自分の腕を彼の腕に絡ませる。

「やったー!高いのばっかり思いっきり食べるぞー!」

「って、それは勘弁して下さい!」

慌てたようなゴーシュの声が聞こえて、私はさらにくすくすと笑うのだった。



ねえ、私は心配なんだよ。いつか、ゴーシュがいなくなってしまいそうで。私の大好きな人。私はゴーシュが傍にいてくれるから幸せなの。だから、ずっと傍にいてね。




心配する切なさ

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働きすぎなゴーシュを心配するヒロインの心情を書きました。

大好きな人を見守る事しかできないのは、とてもつらい事です。助けてあげたくても、どうしようもできない。そういうもどかしさを感じていただけたら…と思います。

2010.09.30 up
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