「やっとハチノスに戻ってきたね」

ハチノスを見上げて、私は安堵のため息を吐いた。

「そうですね。どっかの誰かさんが人の忠告も聞かずに、ビフレストから落ちて風邪引くから」

「あう、ごめんなさい…」

ゴーシュの言葉に、私は頭を下げるしかない。彼の言葉通り、私はビフレストから落ちて風邪引いたのだった。そんな私をずっと看病してくれたのは、今隣に立っているゴーシュで。

「さあ、早く館長に報告して帰りましょう」

「うん!」

私とゴーシュは館長に報告するべく、ハチノスの館内に足を踏み入れた。



「館長への報告も終わったし、あの時の質問の答えを教えてくれるんでしょ?」

「もちろんです」

ハチノスを後にして、私とゴーシュは歩いている。会話の内容は、帰り道に私がした質問の事。私の裸見た事についてゴーシュはどう思っているか。後で教えてくれると言ったけど、どう教えてくれるんだろう?

「早く教えてよー」

「ここよりも、リーシャの家で話しましょう」

急かす私を宥めるように、ゴーシュはにっこりと笑った。なんかお預けされた気分。

「えー、今教えてくれたっていいのに」

「ちゃんと教えてあげますから、早く行きましょう」

ゴーシュはにこにこと笑いながら、口を尖らせる私の手を握って、そのまま引っ張って行く。え、私、ゴーシュに手を握られてる!?嬉しいけど、何で?



「ただいまー、やっと我が家に到着したよ」

「お邪魔します」

玄関の扉を開けて家の中に入れば、ゴーシュも続けて入ってきた。

「お茶用意しようか?」

「いえ、僕は結構ですよ。それよりも着替えてきてはいかがですか?」

「いいの?じゃあ、先に着替えてくるね」

私がお茶を用意しようとしたら断られてしまった。そして、逆に着替えてきては?というゴーシュの提案。不思議に思いつつも、了承して寝室へ着替えに行く。

「どの服着ようかな?」

クローゼットを漁りながら、ゆったりとした服を探し出す。テガミバチの制服はかっちりとしているから、普段はゆったりとした服を選んで着る事が多くなってきた。

「まあ、こんなもんかな」

制服を脱いで普段着に着替えてから、鏡の前でくるっと一回転。変な所がないかを確認して、ゴーシュの待つリビングへ急ぐ。

「ゴーシュ、お待たせ」

「そんなに待ってないから大丈夫ですよ」

ソファーに座ってくつろいでいるゴーシュの隣に、私も座った。

「ねえねえ、早く教えてよ」

「聞いても後悔しませんか?」

「今更だよ、ゴーシュ。後悔するぐらいなら、最初から質問なんてしないから」

真剣な顔したゴーシュに、私はにっこりと笑う。早く教えてほしいのに、随分と勿体ぶるよね。

「つまりは、こういう事です」

その言葉と共に、私はゴーシュに抱きしめられた。ゴーシュの匂いだろうか?優しい彼らしい匂いが、胸いっぱいに広がる。

「好きな女の子の裸を見て、何も感じないわけがありません。ずっとこうしたかった…」

そう言われて、私を抱きしめる力はますます強くなった。今なら私の気持ちを言えるような気がする。

「私ね、ゴーシュの事が好き」

「嬉しいです。僕もリーシャが好きですよ」

私が素直に自分の気持ちを伝えると、ゴーシュも同じように伝えてくれた。嬉しいな。にしても、両思いだったんだね。全然気づかなかったよ。

なんて考えていたら、いつの間にかゴーシュの顔が近づいてきていた。もしかして、これはキス!?目を閉じた方がいいよね?

目を閉じて、じっと待つ。胸のドキドキは最高潮だ。唇に触れた感触があったと思ったら、すぐに離れた。目を開けたら、はにかんだ顔のゴーシュが見えて、顔が赤くなる。

「大好き」

湧き上がる気持ちを伝えて、私はゴーシュの背中に腕を回した。いくら伝えても伝え足りないぐらいの想い。本当にゴーシュが好き。

「すみません、リーシャ。我慢できそうにないです」

何が?という問いかけは言葉にならなかった。ゴーシュの口が私の口を塞いだから。

翌日、私の腰が痛くなって大変だった。




伝える気持ち

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猪突猛進も程々にの後日談です。この時からゴーシュとヒロインは付き合い始めました。

これも実話が元ネタだったりします。

2010.08.14 up
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