「今日も無事に配達が終わりましたね」

「うん、もうお腹ぺこぺこー」

今日のお仕事を終えて、ゴーシュと一緒に帰る私。つい先日ゴーシュからプロポーズされて結婚したから、今の私はリーシャ・フィゼルじゃなくてリーシャ・スエード。家も今やスエード家で、ゴーシュとシルベットと私の三人暮らしなの。ちなみに、職場では旧姓のままで通してるよ。仲のいい人にだけ結婚した事を伝えたけどね。

「リーシャ、ちょっといいかしら?」

不意に後ろから私だけ呼び止められる。振り向けば、そこにはアリアさんが立っていた。

「話があるから、ちょっとリーシャを借りていくわ。あ、ゴーシュは先に帰っててくれない?」

「なるべく早めに終わらせて下さいね」

「大丈夫よ、すぐ終わるから」

口を挟む間もなく、私はアリアさんに広場へと連れられた。そして、二人揃ってベンチに座る。一体、何の話だろう?

「あの、私に何か…?」

「あなたと結婚したって、ゴーシュに聞いたの。だから、幼なじみとしてあなたに尋ねておきたい事があるのよ」

アリアさんはにっこりと笑った。そっか。ゴーシュはアリアさんにも結婚した事を伝えたんだ。

「何でしょうか?」

「ゴーシュとの結婚を決めた理由を聞かせて」

まっすぐな眼差しのアリアさんだった。ゴーシュの事を大切に思ってるのが、とても伝わってくる。だからこそ、中途半端な答えじゃ許されない気がした。

好きだから。一緒にいたいから。そんな理由じゃない。もっと深く、しっかりとした理由。ゴーシュの幼なじみであるアリアさんにも、この結婚を祝福してほしい。

「ゴーシュと一緒に人生を歩いていきたいと思ったんです。誰よりも近くで、同じ物を見て、同じ物を感じたい。彼が傷ついた時は私が支えて、嬉しい時は私も笑って。そんな風に大好きな人と人生を一緒に過ごせたら、それはきっと最高に幸せだと思うんです」

アリアさんをじっと見据えて、私は自分のこころを言葉にした。初めてかもしれない。彼女とこうしてきちんと向かい合って話すのは。いつも私が避けていたから。

「もうすぐゴーシュがアカツキに行ってしまったとしても?」

「それは覚悟しています。でもいつか、ゴーシュは私とシルベットをアカツキに呼び寄せてくれる。私、信じてますから」

アリアさんと私の視線が交わる。先に逸らしたら負けだと思ったわけじゃないけど、視線を動かせなかった。不意に、アリアさんがふうとため息を吐く。

「よかったわ。あなたがゴーシュの選んだ人で。好きだからとか、一緒にいたいからとか、そういう理由を言われたら、私は反対していた」

アリアさんに言われた内容を聞いて、私はほっとする。どうやら、私の推測は当たっていたらしい。

「リーシャ、結婚おめでとう」

「ありがとうございます!」

アリアさんからの祝福に、私は深々と頭を下げる。彼女に対する苦手意識は、いつの間にかなくなっていた。

「そんなに頭を下げられたら困るわ。それよりもゴーシュをお願いね。私じゃ駄目だったから…」

「はい!」

最後の呟きを聞かなかった振りをして、私はしっかりと返事をする。アリアさんのゴーシュを大切に思う気持ち、確かに受け取ったよ。



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