知っているよ
ほんとうはやさしいんだ
汚い肌をしているが
中身は柔らかく、あたたかく、どろっとしている
いつも不安定だ
わたしは知っているよ
いつも見ているんだ
いつ、何時(なんとき)もきみを監視する
ほんとうのきみが傷ついてしまわぬように
いつ、何時もきみを抱き締める
抱き締めて、硬化して、
体温も失せて、ぶ厚くおおきな
皮膚となって、壁となって、
森なって、歴史となるように
きみはわたしの用意した暗闇の中で
泣いているのか、微笑んでいるのか
骨が退化して、より脆くなって
眠っているのか、死んでいるのか
もう泣かなくていいよ
きみの想像する一切の痛みから
わたしが守ってあげるからね
寝ていたって構わないよ
きみの持つ唯一のやらかい部分を
ここで刺してさしあげるからね
わたしはきみの親友であり、恋人であり、母であり、森である
だから知っているよ
ほんとうはやさしいということ
汚い肌をしているが
中身は柔らかく、あたたかく、そしてどろっとしているということ
ただひたすらに純粋なだけなのだ