paradox 拍手お礼 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
(拍手お礼文:沖縄初夜)

本当に―――
自分でもつまらない拘りだと思う。

自主トレで宿泊する場所は、かつての自分が引退試合の大会時に宿舎として利用したリゾート施設の“ある部屋”に決めていた。

だが吹雪も……豪炎寺自身の気持ちの区切りとしている小さな拘りの一つひとつを敏感に汲み取って、丁寧に反応する感受性を持っている。


「わぁ……この部屋……」

フロアについた時からソワソワし始めていた吹雪は……とっくに気づいているのだろう。

豪炎寺が……かつて初恋を遂げると同時に自分の過去に別れを告げたこの部屋で、再びスタートを切ろうとしていることに……

余裕無い始まりだった。
あの夜も……そして今夜も。

「…あっ……ぁ……や…だ」

激しすぎる……と身を捩る吹雪を柔らかいベッドの上に押しつけ抵抗を封じ込める。

「シャワーだってまだ……」
「そんな余裕は持ち合わせていない…」

「ぁん……や…っ……僕は…も…どこにも行かないっ…てば」
「どこにも行かないお前を早く味わいたいんだ」

今まではいつも―――手離さなきゃいけない葛藤に苛まれていたから。

「や……やだっ……ああっ…」

吹雪は可愛い声をあげ、下肢の付け根を弄る豪炎寺の手を濡らす。


―――もう、君が急かすから。

羞恥に顔を赤らめた吹雪が詰ると、豪炎寺は口角を上げた唇で恋人の性器を先端からなぞり、溢れる蜜を口内に啜りとる。

漆黒より深い闇。
氷より凍てつく孤独。
葛藤の茨生い茂る荒野を抜けて、それでも消えなかったしたたかな熱が、じわじわと愛しさを繰り返し刻むように吹雪の身体の奥を揺さぶっている。

「……っ……はぁ……ダメ…」
「……感じすぎだ……」

「…じゃ……手加減してよ…」
「……しない……」

これが今の俺の正直な愛情だから……と深い色の眸は心まで呑み込むように吹雪の瞳を真っ直ぐに射抜く。

温度の高い愛撫に跡形もなく蕩けてしまいそうな肌。
吹雪はすべてを手離し全身を快楽にゆだねていく………


シーツにさえ届かない……めくろうともしてないベッドカバーの上を、頼りなく彷徨う白い両手を褐色の手がぐっと包む。

「あ……イく……」

「何度でもイけばいい……」

戻ったときの……縋るような瞳がたまらなく好きだ……
囁きながら煽る律動。
意地悪なのか優しいのか、ハードな愛にがんじがらめの初夜……

なんだろう……その……なんていうか……この倍増感?
吹雪はふと思う。

「……あの…さ、……君の中に……豪炎寺くんもイシドさんもいる……気がする……」
初めての絶頂に辿り着き、インターバルのあいだ。
吹雪は恋人の乱れた髪を梳きながらそっと呟いた。

「当然だ。俺はイシドシュウジから預かった想いも……一生かけて遂げるつもりだから」

絡みあうように抱きあい、まだ荒い息と鼓動が互いを優しく挑発しあう。
次の営みへと崩れ落ちていくように―――

「今夜は俺に任せろ……なにも考えなくていい」

俺を幸せにするとか……わざわざ考えなくたっていい。お前が腕の中にいるだけで俺は、幸せなんだ。

豪炎寺の囁きに頬を熱くしながら、吹雪は頷いた。


君と、貪る、幸せ。

素直に与えあい……感じ合える距離で、これからをともに生きていく。


今夜がその始まり……






∞(沖縄初夜)完
clap

top