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「手作りするのやめようかな…って毎年思うんだけどさ」

北海道の知り合いの牧場から、この時期になると特製生クリームの注文表入りのダイレクトメールが届くんだよね…

と目をそらしながら言う仕草が可愛くて。

「フッ……牧場に感謝しなくちゃな」

「………………」

「食べてもいいか?」

「もう君のだよ」
吹雪は拗ねたように頷く。

とろけるような甘さと、ピュアな香り………俺は幸せ者だと実感が沸いてくる。

このチョコレートは去年も……一昨年も食べた。

夕香が苦笑しながらフィフス本部に持ってきた
差出人の無いチョコレートの包みの中に入っていたのと同じ味だ。


「吹雪………俺は……」
「わかってるよ」

「何をだ?……俺はもう…」
「言わないで」

吹雪がふわりと胸に飛び込んでくるのを抱きとめた。

「ずっと………お前を離さない」

「………………」

震えてる?………小刻みに揺れる肩を撫でると「お風呂……先に入ってきなよ」と小さな声が耳に届く。

「今日は……ゆっくり愛し合おうな」

念を押すように耳もとで囁くと こくこくと首が縦に揺れ柔らかいプラチナの髪が鼻先を擽った。


なのに―――


風呂から上がると部屋から
吹雪の姿は消えていた。



「……あの、バカ……」


分かってる。本当にバカなのは俺自身だ。

サッカーのために全てを擲った?

そんな簡単な理由じゃない。頭で考えたり、胸に問えばわかりきっていることじゃないか。

吹雪より大切なものが、この世に存在するはずがないことくらい。


『サッカーのために』だなんてそんな綺麗事じゃない。

今でも何故あんなことをしたのか自分の理解すら超えたところで、本能に任せて体が勝手に動いたとしか言いようがないんだ。
シュートを打つ瞬間、思考や感情に促われていないのと同じに。


あんなことをしてお前に哀しい顔と淋しい思いをさせても

ずっと―――愛してた。

お前だけを。

サッカーよりも、ずっと だ。
矛盾しているようだが、これが本音だ。

なのに、俺はそのことを言葉で伝えたことがない。

敵陣の玉座を降りて帰ってきた俺を、いつもどおりに迎え入れてくれた吹雪にこれ以上ない感謝と信頼を寄せつつも…………



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