セクハラで訴えてもいいですか


「名前って今日の下着の色何色ですか」
「ぶふっ!!なっ…げほっ……ちょっと、お茶吹いたじゃないですか!!」

やっと休憩が取れたというのに、セクハラ上司は一体何を言っているのでしょう。
仕事しすぎて頭がいかれたのかもしれない。とりあえず大事な書類に被害がなくて助かった…。

「何なんですか一体。答えませんからね」
「いえ、先ほどそういう話をしてたので」
「どんな話してるんだよ」
「そもそもそういう話に持って行ったのはお香さんですから」
「人のせいにするな!というかお香さんがそんな話するわけない」

聞けば色の話からおぱんつの話に…。そこを広げていくのはさすが男だな。
なんか知らないけど法廷で男たちの熱いおぱんつ談義が繰り広げられたとか…その場にいなくてよかった。
いなくてもこうして聞いてくる変態がいるんだから。

「で、名前の今日の」
「だから答えませんって」
「彼氏にくらい教えてくれてもいいでしょう。あ、この前買ったやつですか?」
「嫌ですよ!この前買ったのって…そうか、あれか」

あの悲惨なデートのときの…。思い出したら恥ずかしくなってきた。というか、今自分がどんな下着つけてるかなんて記憶にない。
そんなの誰にも言いふらさないんだからいちいち覚えてないよ。えっと確か今日は……って、思い出すのも鬼灯さんの思う壺だ。
透視でも始めるのか凝視してくる鬼灯さんに資料を投げれば、逆に欲しかった書類を投げつけられる。ただの紙も束ねればすごい鈍器になり得ます。久々に痛いです。

「白ですか?」
「だから答えませんって」

なんだろうこれ、色を適当に言って私の反応で当てるつもりかな。嫌だなそれ。とりあえず表情に出ないように顔を隠し…。
腕を掴んですごいこっち見てる。どうしてそんなに下着の色が知りたいんですかこの上司!
からかってるなこれ。こんな話題でからかわなくてもいいじゃない!

「黒」
「……」
「水色」
「……」
「ピンク」
「……」

この沈黙。そんなに見つめられても私の表情は一ミリたりとも動いてないはずだ。わかるまい。わかられてたまるもんですか。
鬼灯さんは私の目をじっと見つめ手を離した。やった、諦めてくれた。

「水色ですね。では、次は柄ですが…」
「な、なんなんですか!勝手に決めないでください!!」
「その慌てぶりがもう、それだと言ってるじゃないですか」
「っ……違います。全然違います!もうこの話やめましょう!」

怖いこの鬼神。無表情で興味なさそうな顔してるくせに考えてることがその辺の男子中学生と一緒だもん。
いや、さっき法廷にいた人みんなそれで盛り上がってたんだっけ。いい大人が何してるんだよ。
ひええ、と体を隠していれば鬼灯さんはなんだか満足そうでむかつく。ああもう、恥ずかしい。

「むっつりめ」
「男はみんなそうですよ。ところで下着の色もわかったことですし」
「だからもうやめましょうよ」
「実際に答え合わせしてみないと気になって仕事も手につかないのですが」
「聞けよ」

実際ってなんだよ。肯定すればもうこの話終わるの?それなら頷きますよ。
けれど鬼灯さんはまたもや私の手を掴んで、今度は視線が完全に着物の中の下着にいっている。いやまさか。

「ちょっと見せてください」
「嫌ですよ!あ、ちょっと、待って」

衿を死守するんだ。ついでに裾も。絶対油断してたらめくられる。
チッと舌打ちするのは読まれたのが気に食わないからなのか。本当にめくるつもりでいたのかな。

「ちょっとくらいいいではないですか。もう全部知ってるわけですし」
「そ、それとこれとは別ですよ。ここをどこだと思ってるんですか」
「そういえば最近してないですねぇ…」
「あああ、このパターンは…」

嫌な予感しかしない。この流れはほら、また私を恥ずかしがらせようととんでもないことを言い出す前フリ!
それもおぱんつの話より最悪な方向だ。こんな時間から一体何の話をすると言うんですか。
鬼灯さんは私の体をひょいと持ち上げて膝の上に座らせた。逃げ遅れてしまった。これはもうダメだ。

「今夜にでもどうですか?」
「やめてください、仕事中ですよ」
「休憩のときくらいいいでしょう」

背中にぬくもりが。温かくて安心してしまうぬくもりが。それも耳元で話されたらじっとしてるしかなくなる。
鬼灯さんは私を抱きしめながら顔をすり寄せ、耳に唇を触れた。それ、絶対わざとだから嫌になる。どうせ言っても偶然当たったとしか言わないだろうけど。

「嫌なんですか?」
「…そういうわけじゃ」
「子作りしましょうよ」
「こっ……!?」

いや、待って。子作りって…私たちまだ付き合ったばかりだし。そういうのまだ早いと思うんですけど。
それに直球に何を言ってるんだ鬼灯さん。子供が欲しいとか…馬鹿じゃないの。
鬼灯さんは抱きしめていた手をお腹に持ってきて優しくさすっている。何してるんだよ!

「あ、名前は順番を気にする方ですか。それなら結婚しましょう」
「…しません」
「では仕方ない。先に子作りしましょう」
「…しません!というか、鬼灯さんが興味あるのは子作りの過程であるわけで」

どうせ私を手篭めにして好き放題するのが目的だ。ああ、なに考えてるんだ、顔が熱い。
どうしてこんな話になってるんだっけ。鬼灯さん、そろそろその手やめてほしい。というか降ろせ!

「いいじゃないですか子作り。私頑張りますよ」
「鬼灯さんが頑張るといいことないので嫌です」
「大丈夫ですよ。ちゃんと名前も気持ちよくしてあげますから。たくさん愛情を注いであげますから」

その耳元でバリトンボイスを響かせるのは反則だと思います。もう泣きたくなってくる。
鬼灯さんは私を膝の上から下ろすと普通に抱きしめてきた。真っ赤な顔を見て、勝手にまんざらでもないと解釈し始める。
誘うように口づけされて、このままだと流れに飲み込まれそうになる。

「名前、今夜私の部屋に来てください」
「……嫌です」
「では、私が名前の」
「もう嫌です!!鬼灯さんなんて知りません!!」

人の下着の色聞いてきたり、白昼堂々子作りの提案なんて。
執務室を飛び出せば真っ赤な顔を隠しながら自室へと逃げた。
後ろの方で「やりすぎましたねぇ」と聞こえたのはきっと気のせいだと思う。
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