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▽おやすみ(鬼灯)

「はあ、今日も疲れた……」

ため息を吐きながらソファに座った彼女は、喉を鳴らしながら缶ビールを飲み干す。キンキンに冷えたビールが喉を潤し、お風呂上がりの火照った体を冷ましていく。今日も頑張った、あと少しだ、と休日までの日数を数えながら机の上に手を伸ばす。しかし、その手は空中で叩き落とされた。

「人の飲まないでください」

濡れた髪を拭きながら鬼灯は彼女を睨み付ける。彼女はわざとらしく舌を出すと冷蔵庫へ駆けていった。

「明日も仕事なんですから、ほどほどにしてくださいよ」
「わかってますって。はあ、おいし〜!」

言っているそばから楽しそうな声が聞こえる。
キッチンカウンターに寄りかかりながらぐびぐびと缶ビールを煽る姿は豪快で、さすが鬼といったところだ。可愛げはないが、清々しさはある。見ていて気持ちはいいが、人には見せられないだろう。
鬼灯は呆れながら自分の缶ビールを煽った。

「おつまみ作ります?」
「いらないです。作ったらさらに飲むでしょう」
「バレました?」

悪戯っぽく笑うと彼女は鬼灯の近くに寄ってくる。スキンシップが多くなるのは酔いが回り始めた証拠。さては二本目ではないな、と腕を絡ませてくる彼女を引き剥がす。負けじと離さない彼女は鬼灯の髪に触れた。

「髪、乾かしてあげましょうか?」
「自分でやるので離れなさい」
「えー、たまにはいいじゃないですか。鬼灯様の髪さらさらで乾かしやすいし。ね、いいでしょ?やらせてくださいよー」

ねー、と鬼灯を揺さぶりながら子供のように駄々をこねる。だんだん面倒になってきた鬼灯は、今度こそ強引に彼女を引き剥がした。
鬼灯がその気になれば簡単に力負けしてしまう。ソファに投げ出された彼女は唇を尖らせていじけてみせるが、手元にあるクッションを抱えると、どんどんまぶたが下がっていく。一瞬目を離した隙に、彼女は夢の中へと旅立っていた。

「酒飲んで騒いで寝る……どうしようもないですね、本当に」

鬼灯は寝息を聞きながらソファの端に腰かける。クッションに顔を埋めて幸せそうに眠る彼女の姿を眺めながら、鬼灯は彼女の頭を撫でた。無意識にすり寄ってくるのが名残惜しいが、このままの訳にもいかず、ベッドへと運んでやる。布団をかけてやればもう朝まで目を覚まさないだろう。

「おやすみなさい」

鬼灯は彼女の名前を呟くと、頬に短くキスを落とした。
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