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7

ハラハラと静かに涙を流す先生は、今にも消えてしまいそうだった。そんな先生に、木暮が静かに声をかけた。

「…俺もね、初めから綾小路を100パーセント信じていたわけじゃありません。綾小路はものすごくモテるし、いくら公認の中って言われてもやっぱりそれでも綾小路を恋人にしたいって思う人はいくらでもいるわけで…綾小路自身も、付き合うようになってから俺を試すために浮気まがいなことをしたり、逆に俺が浮気をしたんじゃないかって疑われることもありました。
…それでも」

膝枕をされている俺の頭を、小暮がそっと撫でる。

「綾小路が好きだから…俺ができることって、綾小路の幸せを望むことだけなんですよね。俺が信じているのは、綾小路自身というより綾小路の幸せを願う俺自身。だから、先生が言うように俺はできた恋人なんかじゃないんです。
綾小路の幸せを願うことができるから、今こうしてここにいることができるんです」
「…」

いつか、俺が嫉妬させようとして小暮の前で他の子を口説くような真似をしたことがあった。あの時、小暮は涙をこぼして笑顔で俺に別れを告げた。
その時も、同じ事を言っていた。

「先生…」

薬のために小さな声しか出なかったけど、ちゃんと拾ってくれたらしくて涙に濡れた目が俺を見る。

「…先生、さ、…それ、彼氏に言った…?」

小暮は、健気で一途で純粋だ。俺のために自分の気持ちを押し殺すことだってある。だけど、なにも言わないわけじゃない。小暮は、嫌なことはやめてくれと言うんじゃなくてそれが俺の望みならと言う。
素直に、自分の気持ちを俺に伝えてくれるんだ。

「小暮は、さ。ちゃんと、自分が思ってることは言ってくれる。先生は、言ってる?」
「…ぼ、く…、ぼくたちは、おとな、だから…。それに、もう何年も付き合って、」
「…じゃあ、学生のときは、言ってた…?…もし、もしさ、俺、小暮とずっとこの先いて、小暮がなにも言わなくなったらいやだ。…それが、何年も付き合ってるからとか、大人だからとか…そんな理由で我慢されるのはいやだな…」

ずっと一緒にいたいから、なにも言わないじゃなくて。ずっと一緒にいたいから、自分の気持ちを言って欲しい。
そりゃあ、完全に理解し合えることなんてないしこれは言わない、とかはあるかもしれない。
だけど、自分に対しての気持ちはきちんと口に出して欲しい。

「俺もだよ…綾小路」

優しく、俺の大好きな笑顔を浮かべた小暮が愛しい、と指先で伝えてくれる。

「お前がいつだって俺が伝えたことに応えてくれるから、俺はお前の幸せを願い続けることができるんだ。そして…その幸せが、俺と綾小路の二人で作っていけるなら嬉しい」

もちろん、お前とだ。だって、誓ったじゃないか。二人で幸せになろうって、約束したもんな。

小暮の言葉に答える代わりに俺を撫でるその手を掴み、キスをする。
やがて先生が、小さく謝罪を口にしてそっとソファから立ち上がり生徒会室を後にした。

その背中は、丸まってはいたけど何かを吹っ切ったようなそんな感じがした。



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