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5

「あんたも、自分の恋人が下級生に思わせぶりな態度してるの、よく横で見てられるな!しかも、わざと原口の前であーんとかしやがって…!
原口の気持ち、考えたことあんのかよ…!」

泣きながら二人に怒り、俺を力強く抱きしめる。北島の厚い胸板に、なんだかドキドキしてしまう。

「き、北島、離して…」
「なんでだよ。なんで、そんな思いしてるのに会長が好きなんだよ。諦めろよ…!俺、お前の辛そうな顔もう見たくねえよ…!」
「…えと、君…」

兄ちゃんが何か言おうとしたのを、伊集院さんが無言で首を振って止める。

「今現在晴哉が辛い思いをしてるのはお前のせいじゃないのか?食堂でも、理不尽な言いがかりをつけてきただろう。それで晴哉が傷ついたとは思わないのか?」

伊集院さんからはいつもの優しい雰囲気は微塵もなく、威圧感たっぷりに北島に圧力をかける。

「そ、れは…、」

北島が答えることができずに黙り込む。唇をかみしめて、ぐっと何かをこらえているみたいだ。

「間違った言葉は相手を傷つける。思っていることは正直に言わないと、相手になんか伝わらないぞ。俺が晴哉を構うことになんの問題がある。お前には関係ないだろう」

伊集院さんの言葉に、北島が何かを決心したかのように顔を上げて真っ直ぐに伊集院さんを見た。

「…関係なら、ある。
好き、だから。原口が好きだから、あんたに振り回されてる原口を見るのが辛かった…!」


北島の告白に、俺は目を見開いたまま固まってしまった。


「会長には相手がいるのに、お前いっつも会長ばっか目で追って…、初めは、それでお前が幸せならって思ってたけど、最近お前、会長とこの人が二人でいるの見ていつも辛そうな顔するから…!」


や…、それ、うらやましくて見てただけなんだけど…


「俺、上手くできなくて…、だって、会長と喋ってるお前、ほんとに嬉しそうで…!でも、最近ずっと、お前ため息ばっかで…、だから、お前が早く、会長諦めればいいのにって…、…お前の、あんな顔、見てんの辛い…」


北島が、またぼろぼろと涙を流して歯を食いしばりながら自分の思いを吐露していく。


…あの、北島が。


俺にいつも意地悪ばっか言ってくる、えらそうな北島が。


「…なあ、原口。俺じゃだめか?
散々お前にひどいこと言ってて、虫がいいのはわかってる。もう、あんな言い方しないから。今まで、ごめん。
ふ、振り向かない相手じゃなくて、俺にしろよ…!お、俺、頑張って、お前に幸せな顔させっから…!」


見たことがないほど真剣な眼差しを向けられ、思わず視線を反らしてしまった。
こんなの、完全にキャパオーバーだ!だって、だって、北島は、俺に意地悪ばっかしてたのに。
今更、それが愛情の裏返しだったなんて言われてもなんて答えたらいいのかわかんない!

「晴哉?」

伊集院さんが優しく微笑みながら俺を見る。兄ちゃんもニヤニヤして俺を見てる。俺は恥ずかしくて顔を真っ赤にして北島と兄ちゃんたちを何度も見比べた。

「わ、わかんないよ…。だって、だって、北島は俺にいつも意地悪ばっかしてたんだもん。さ、さっきだって、俺のストラップ、壊したし…」
「…っ、ご、めん。だって、お前、会長にもらったやつ見て、『幸せの青い鳥になれない』とか言ってたから。叶わない思いなのに、そんな物それでも大事なのかよって…。…壊しちまえば、諦めつくんじゃないかって、勝手に思って…」

まるで叱られた犬のようにしゅん、と落ち込んでまた涙を流す。北島って、こんな涙もろい奴だったの?
…しかも、それは自分の為じゃなくて、俺のため。俺がかなわない恋をして辛い思いをしてるんじゃないかって、俺の気持ちを考えて泣いてくれてる。

勝手に勘違いして、人の事でこんなに怒って泣いて。

暴走しちゃったりするけど、北島はほんとは冷たい奴なんかじゃなかったんだ。

「形は違うけど何だか誰かさんを思い出すよな?」
「言うなよ。だからこそ助け舟を出してやったんだ」

二人がそんな北島を見てくすくすと笑った。

「伊集院さんは知ってたの?」
「知ってたというよりは気付いた、かな。食堂での態度を見た時にな。晴哉、信じられないかもしれないが俺は付き合う前は忍にひどい事をしてたんだ」

伊集院さんが!?

「兄ちゃんの事、めちゃくちゃ好きなのに!?」
「…にいちゃん?」

北島がぴたりと涙を止めて聞いてきた。

「初めまして、晴哉の兄の忍です。」
「あ、あんた、兄貴のくせに自分の弟の気持ち知ってて会長といちゃついてたのかよ…!」

信じらんねえ、と北島が兄ちゃんに怒りをぶつける。俺はそれを見て、思わず吹き出してしまった。ああもう、こいつほんとにあの北島?



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