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「げほっ…、ごほっ…」


案の定、というかなんというか。びしょ濡れになった僕は次の日しっかり風邪をひいてしまった。
昔からそんなに体の強くない僕は、雨とかにとても弱くてプールの授業なんかでもしっかりと水気を取らないと必ずといってもいいほど熱を出す。今回、濡れた後着替えをするのが遅くなってやっぱり熱を出してしまった。

一颯は相変わらず一言も口を利くことなく学校に行ってしまった。父様はずっと仕事でほとんど家に帰ってきてない。

僕はふらりと起き上がり、机から一つの鍵を手にすると部屋から出て西の奥の部屋へと向かった。

「けほっ…」

時折出る咳で痛む喉を押さえながら目的の部屋の前に着くと、手にした鍵で扉を開ける。部屋の中に入り、奥にある戸棚の中から一枚の写真を引っ張り出す。

「母様…」

この部屋は、母様の思い出の品をしまった部屋だ。僕ら兄弟がいつでも出入りできるようにと鍵を一つづつもらって、母様の思い出を大事に大事にしまっている。
僕は母様が微笑んでいる写真を手に取ると、ぽろぽろと涙がこぼれた。

「さみしいよー…」

泣きながら、母様の写真を胸に抱く。
僕は末っ子で、一番泣き虫で甘ったれだった。そんな僕を皆大事に育ててくれた。
でも、大きくなって兄様には小暮さんが。一颯には鉄二が。
それぞれ皆、一番大事なものを見つけて僕の傍からいなくなる。皆いつかは自分に一番大事なものの傍に行くことなんてわかってる。僕は誰かの一番じゃない。

僕は小さい頃から母様に似てるって言われてきた。皆があまりにもさみしそうにそう言うから。

僕は、母様の代わりになれればと思っていたんだ。

一颯が僕を見て『母様に会いたい』と泣いた時から、僕は一颯の前で泣くのをやめた。父様の話だと、母様はとても気の強いしっかりした人だったんだって。だから、しっかりしなくちゃって。誰よりも気を張って、強く強くならなくちゃって。


でも、昨日委員長の言った言葉は、僕の心の芯を的確に削った。

僕のせいで母様は死んだ。僕は生まれるべきじゃなかった。僕さえいなければ、この家には今でも母様がいて、一颯だって泣くことはなかったのに。父様だって、あんなに仕事ばかりじゃなくて家に帰ってきていたかもしれないのに。

僕は泣きながら母様の写真を胸に、いつの間にかその場で眠ってしまった。

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