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初恋の人の兄×元一途平凡

※例えば、人魚姫的な立場になった受が大人しく健気じゃなかったらば、なんて考えて思い付いたお話です。健気な受けでないと許せない方、元の攻め以外とくっつくのが許せない方などはお避け下さい。

美形×平凡です。

――――――

『大きくなったら、けっこんしような!例えどんな姿になっても見つけ出すから!』
『ええ〜、だめだよ。だって君は、きっと僕なんて忘れちゃうもん』
『絶対に忘れるもんか!』
『…じゃあ、忘れたら許さないからね。もし忘れちゃったりしてたら絶交だからね』
『ああ!』

幼い頃によく遊んだ、近所に住んでいたあの子が引っ越してしまう前にした淡い約束。だけど俺はずっとそれを夢見て、あの子をずっと想ってた。そんな初恋のあの子と再会したのは高校に入学したとき。
新入生への挨拶で壇上に立つ彼を見て驚喜した。
俺は本当に平凡な地味な男に育ってしまったけど、あの子は可愛らしい昔そのままに超イケメンに成長していた。
この学園の生徒会長なんてものに就任していた彼は学園の超人気者で。でも、昔に約束した初恋の子を想っているからと告白は全て断っていると聞いた。
だけど、セフレはたくさんいると聞いてなんじゃそりゃとは思ったけど。そんな初恋のあの子に、約束を覚えているかと嬉々として駆け寄った。

「なんだ、平凡が!気安く話しかけてんじゃねえよ」

傍に行き、声をかけた俺に対して彼は一瞥をくれたあとバカにして心底見下した顔をして突き放した。
その横にはとても可愛らしい男の子がいて、大事そうに肩を抱いている。そいつも、俺を見てバカにして笑っていた。

押されて尻餅をついた俺がぽかんと見上げていると回りの生徒達から嘲笑と罵声が飛んでくる。
それを受けて俺は、ぐっと唇をかんで俯いて…

「はっ、厚かましい平凡が、一度でも俺に抱かれでもしたかったか?生憎だな、お前みたいな平凡死んでもごめん…」
「なら死ねやカスが!!」
「ぐはあ!」

思いきり床を蹴って跳ね立ち上がり、そのまま会長の顔を殴り飛ばした。

「きゃああ、会長さま!」
「てっ、テメエ、なにしやがる…!」
「何しやがるはこっちのセリフだ!何が『平凡が』だバカやろう!その平凡に結婚しようってガキの頃迫ったのはテメエだろうが!」
「は!?ふざけんな!お前が俺の大事なあの子だとでも言うつもりか!?」
「そうだよ!お前にいつか会えるって人がどれだけ…」
「生憎だな、大事なあの子はもう見つけたんだよ!」
「は?」

口許をぬぐい立ち上がった彼は俺を忌々しそうに睨み、先程肩を抱いていた生徒をぐっと抱き寄せる。

「こいつが、俺のあの子だ。さっき確認した、間違いない」
「は…?」
「どこかから噂を聞き付けて成り代わろうとでも思ったか?貴様みたいな平凡が俺に近づこうと卑怯な手を思い付いたもんだ。騙されるとでも思ったか!」

彼は俺を憎々しげに睨み付け、隣の男の子を強く抱き寄せキスをした。真っ赤になった男の子が恥ずかしそうに顔を俯かせると彼は蕩けそうに甘い笑顔で彼を見た。

「見ろ、この愛らしい姿を。昔と少しも変わらない…。お前はあの頃のままだ。俺の記憶にあるあいつだ。言っただろう?どんな姿であろうとも間違いはしないってな」
「…は、い…」

彼がはにかんで小さく頷けば、こいつは満足そうに頬を撫でて俺を嫌悪を露に睨み付けた。

「わかったか、貴様なんぞ似ても似つかない。よくもそんな顔で厚かましくこいつのふりができたもんだ。身の程を知れ、二度と顔を見せるな!話しかけるな!」

ぽかん、と口を開けて二人を見ていたのはほんの数秒。
すぐに言われた言葉が頭中を駆け巡りそれを理解した瞬間、俺の中の全てが割れた。

ふん、とバカにして見下すやつの前にゆらりと立ち上がる。項垂れた頭で目にかかる前髪の隙間から見た奴の顔は『ざまあみろ』と言わんばかりに俺を嘲笑っている。

「…バカやろう」

10年。10年だ。ずっとずっと、幼い頃の彼との幸せな思い出を糧に、彼に再び出会える日を楽しみにしていた。
俺だってバカじゃない、成長するにつれ世間一般では男同士なんて認めてもらえるものではないことだって理解した。
結婚するしないじゃないんだ。そんなことほんとはどうだっていいんだ。

ただ、あの時仲がよかった大好きなこいつと、また会えたらって。あの時の約束は、果たせなくても俺が誰かとすぐにわかってくれたなら。

「もーいい。萎えた。超冷めた。お前なんか知らない。言われた通りにしてやるよ、むしろこっちからごめんだね。二度と関わらないから、さよーなら、お幸せに」
「はん、貴様なんぞに言われなくても…」
「あれ?久しぶりー!」

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