6
1ヶ月に、2、3回。誠二は、俺を抱きにくる。
それ以外は、連絡もないし会うこともない。抱かれる度に俺の心は歓喜に満ちて絶望に落とされる。
セフレになってから、一年がすぎようとしていた。
今までの事を思い出していると、誠二がシャワーから戻ってきた。
思わず、じっと見つめる。
「…何?」
「べつに、なにも」
顔を逸らして、シャツを羽織る。
「あ、俺もうお前とセフレやめるから」
着替えながら、突然誠二が言った。
一瞬動きがとまる。
「え…?」
「結婚したい奴ができた。だから、おしまい。ここにも、もうこない」
誠二の口から、一番恐れていた台詞が放たれる。…結婚。
ああ、ついに。この日が来てしまった。
「…そう。どんな人?」
なるべく平静を装って、聞いてみる。
「めっちゃ一途で健気でさ。自分のことより俺のことばっか考えてんの。一生、守ってやりたくなった」
「…いつ?」
「これからプロポーズすんだよ。」
誠二の顔が見れなくて、着替えるふりをして背中を向けながら話をする。
「…きっと受けてくれるよ。誠二なら、その人をきっと幸せにするだろうね」
「そう思う?」
「もちろん。その女の子は幸せ者だ」
これは、ほんとの気持ちだ。セフレになる前、俺は本当に幸せだった。誠二は、きっといい旦那様になるだろう。
「最後に俺に言うことは?」
最後。
誠二とは、これでおしまい。二度と、会えない。
「…おしあわせに」
振り向くことなくそう言うと、誠二が出て行く気配がした。
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