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「気がついた?林田哲平」
次の日、良平と二人で放課後の廊下を歩いていたぼくは、体に急にばちんと衝撃を感じて気を失った。
目が覚めると、手が後ろで縛られていて、どこかの空き教室に良平と一緒に転がされていた。
そして、目の前にはお姫様がいた。
「おひめさま…?」
「ほんと、君ってどうしようもないやつだよね。僕、忠告したよね?王子様に二度と近寄るなって。なんで、昨日二人でいたの?」
見られてたんだ。
さあっと、顔が青くなる。
「ご、ごめんなさい。お姫様と約束したのに。でも、ぼく、やっぱり王子様とお話したい…お姫様の邪魔しないから、お話することだけ許してください」
たとえお姫様になれなくても、それだけは。
うるうると泣きながら、お姫様に懇願する。
「あのさ、君いるだけで邪魔なんだよね。わかる?これだからイヤなんだよね、自分の立場をわきまえない人間って」
「わきまえないのはお前でしょ」
横で気を失っていた良平が、ムクリと起きてお姫様を睨む。
「良平っ、良平!平気なの?ごめん、ぼくのせいでごめんなさい!」
お姫様が目の前で怒ってるってことは、これはお姫様がしたことで、きっといつも一緒にいるからぼくのせいで良平も連れてこられたんだ。
「お姫様、どうして?どうして関係ない良平までこんな目に合わせたの?」
「はっ、君いつもそいつにべったりでなかなか一人にならないでしょ?
もうめんどくさいからついでだよ、ついで。
それに、そいつ今年の新入生でかわいいナンバーワンとか言われてる奴でしょ?目障りなんだよね、僕の地位を脅かそうとする奴って」
ふん、と鼻で笑うお姫様に、唖然とする。
ひどい。お姫様、どうして?優しい王子様には、優しいお姫様がそばにいるんじゃないの?
「最近哲平の様子がおかしかったのはお前のせいか。さっきも言ったけど、立場をわきまえないのはお前の方。お前、白鳥の親衛隊長でしょ?しかも白鳥が認可してない親衛隊の。
お前なんか僕どころか哲平の足下にも及ばないね。」
良平が、見下したように言う。それを聞いてお姫様が怒りで真っ赤になった。
「ふん、いつまでその態度が続くか見物だね。
お前たち、入ってきて!」
お姫様が言うと、ぞろぞろとゴツい男たちが入ってきた。
「ふふ、今から君たちをこいつらにめちゃくちゃに強姦してもらうから。ちゃんとビデオ撮影もしてあげる。二度と白鳥様に近付けないようにね。良平だっけ?お前はその道の人に流してあげるから。かわいいから人気出ると思うよ?」
クスクスとお姫様が笑う。
男たちが、じりじりと近付いてくる。
ぼくは、怖くて怖くてがたがた震えてる。良平は微動だにしない。
良平、良平、ごめんなさい!
良平には王子様がいるのに!
ぼくは、ふるえる体で良平をかばうように良平の前に出る。
「哲平!いいからさがれ!」
良平の言葉に首を振る。
「お、お姫様なんかじゃない…。こんなひどいことしようとする人なんて、お姫様じゃない!
あなたは、魔女だ!」
「その通りだ」
開いた扉の向こうに、王子様が立っていた。
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