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Die for you



赤赤とした視界に映る男から視線を逸らさず、残る一つの選択に覚悟を決める。青葉が芽吹く新たな春。それへと繋げる時こそが青春の最高潮。深紅に燃える時は今。今こそ、自分の大切なものを死んでも守り抜く時。小雪。小雪。お前を守る為に死のう。お前は俺の命そのもの。心臓よ、彼女に捧げた心臓よ。お前の望むものをやろう。

血の蒸気を纏った身体。私はただ彼の命が散るのを見る。彼は死に抗う事なく、その腕に抱かれた。嘆きの言葉を足下に残し、私はただ彼を見る。彼の横顔。愛する人の横顔。冷えた温もりを持ち続けたまま消えて行く。彼が遠ざかって行く。彼はもう戻って来ない。最期の轟音を聞き、私の中の平和は壊れた。

平和は、本当はお前のものだ。俺はただお前の目が永遠に閉じない事を願っている。毎日少しずつ死んでいくのは俺だけで良いのにと思っている。

ガイは柔らかい視線を感じ、瞼を開け頭を少し動かした。愛しい彼女の微笑を漆黒の虹彩に映す。ガイは小雪に左手を差し伸ばした。手の甲を上に向け指を開き、彼女の瞳を見た。小雪は彼の左手を見、自分の右手を彼に差し伸ばした。傷だらけの手。その手をガイはそっと掴み、小雪の存在を確認した。手には体温があり、皮膚の下には赤い血が流れている。小雪。小雪。あの時もこうやって俺はお前の名前を叫んだ。

こめかみにある縫合した傷。切れた唇に瘡蓋が出来、頬はすっかり痩けて顔色は悪い。だが彼女はちゃんとここにいる。二人は見つめ合い、鼻をすり寄せた。ガイは愛するひとの堪える涙を感じ、彼女の生に触れる。黒々とした空に光る星。かつてそこには闇があるのみだった。だが今は光が勝(まさ)っている。ガイは小雪の頭の上に手を乗せた。そしてにっこりと笑い、乱脈を抑えた。
「愛してるよ」
永劫不変の光。俺は潤った目で自分自身の生きる姿を眺め、途切れぬ地に立っている。彼女と共に。俺たちにはまだ永遠は失われてはいない。

The Weeknd - Die for You