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Comrade



サラは空を見上げた。眩む程の日光に目を細め、二人の男を見た。楽園は終わる。貴方のいた、無限の楽園。

ただ時間というものをふんだんに持っているだけの人間だった。余生を呼吸をして消費する。ただそれだけをしながら、徘徊をしている時に彼が現れた。
膝を抱えていた自分の汚れた両手から視線を外し、顔を上げる。目の前には川が流れている。然程大きくもないし深くもない。芝生の上に両膝をつき、その手を水で洗う。汚れが向こうの方へ流れて行くが月の光で見える事はない。指の骨まで凍りそうな冷たい水だった。その水面に映る自分の顔。だがそれをこの目で捉える事は出来ない。その時サラ、と自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。低い声。水の流れに逆らう事が出来る程の強い声。私は水面から視線を外し、顔を上げた。遠く離れたところに彼が立っている。彼は何も言わない。ただじっと私を見つめている。暗く重たい気持ちになる事があるが、彼の傍にいると何もかも良くなる。恐怖さえも彼のあの眼差し一つでどうにでもなる。ゆっくり瞬きをすると彼はいなくなり、夜が明け青藍の空になった。彼が、時間以外のものをくれたのだ。何処にいても彼の姿が見える。何故彼は私を気に入ったのか、私には皆目分からない。
ガチャリ、とドフラミンゴは電伝虫の受話器を置いた。そして椅子の背にもたれ掛かり、深く息を吐きながら長い脚を前へ投げ出した。後ろでいつものように数人が騒いでいる。少し薄暗い視界に広がる、変わりない青い空。ドフラミンゴはサングラスを掴み、下に少しずらして見た──あいつの目も青色だ。光によって変わる青色の虹彩。ドフラミンゴはサングラスを戻し、その手を肘掛けに置いた。その時サラが騒いでいる数人を通り過ぎ、彼の元へ歩いて来た。そしてドフラミンゴの隣に置いてあった椅子に腰掛けた。新聞を広げ、静かに目を通している。そんなサラをドフラミンゴはゆっくりと見た。冷徹さを感じる顔立ちを持つ女。この女が今でもここに、俺の傍にいる。このままこの先も、この女の一番でいる事が出来たら。ドフラミンゴは空を見上げた。海の匂いや騒ぎ声はすっかり消え、彼は目を閉じた。

彼は私の事を愛していたんだろう。恐らく随分と前から。彼のサングラスが割れ、口から大量の血が溢れ出た。サラはそんな彼をこの目で捉えた。さようなら私の楽園。彼のいた、無限の楽園。