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To the rose upon the rood of time



門限になってもクラブから一向に出てこないとの報告を、アーチボルドは疲労困憊の意識の中で聞いた。肝心の主語を一度も音として伝えて来ない部下に対し、彼は脱いだばかりの上着を再び羽織りながら、自分が出向くからお前は帰れとの指示を下した。何に対しての苛立ちか分からぬものが胸を占めていた為に、それが端末越しに伝わり、部下におずおずと案ずる言葉を掛けられた程であった。赤信号で停車する毎に更に苛立ちは生まれ、呑気に横断する歩行者をどうにか出来ないものかと睨む。しかし、彼が直面している事柄には至って何の問題も見当たらない。門限門限などと周囲の人間は言うが、サラは婚約をしている立派な大人であり、それに加え、今夜一緒にいるのはその婚約者なのだ。何の問題もありはしない。しかし、何故アーチボルドはわざわざ出向いているのか。この答えは彼の心中に堂々と鎮座していたが、その存在を認めようとはしなかった。彼女を連れて再び自宅へ帰った時までの、彼の中で渦巻いていた相反する感情の奔流は表現するのが難しい。鼓膜を叩き続ける際限のない音楽、靄のような煙草の夥しい煙、若人の身体から発する熱気。その中を進むのは愚かさが必要に思え、躊躇っているところに二つの目が捉えた、用を足しに行く婚約者の姿。歩いているその背後に瞳を転じると、難なく見付ける事が出来たサラの姿。暗く色付いた照明が彼女を穢していた。あの恐ろしい発作の因である彼女、近付いてはならないと誓った彼女の手を取ると、アーチボルドは喧騒な現実の逃避所から連れ出した。車内の沈黙がそれと取って代わった頃に、漸く彼が引き起こした出来事の印象が、彼という存在を激しく揺すぶっていた。確かに彼は落ち着いてはいたが、ただ心は痛んでいた。胸の底で彼の魂が震え、慄き、蠢くのが感じられた。
群衆の中に、サラが座っている席から程遠くない何処か隅の方で──其処がどの辺りという事は明瞭に示す事は出来なかったが、一つの顔が、暗色の髪をした、見覚えのある、実によく見覚えのある鋭い眼差しを持った痩せた顔が、ちらと閃いたのであった──いや、ちらと閃いたばかりで直ぐに消えてしまったのである。もしかするとそれは気の所為だったかも知れない。これ程の人数がいれば似てる顔もあるだろうし、何よりこの暗さではそれも大いに有り得る事だ。サラの印象に残っている、ひん曲がったような微笑と、音の鳴る清涼なシャツ。ちらと眼に映った男は群衆の中に紛れ込んでしまったのか、それとも別の場所へ滑り込んでしまったのか、彼女には分からなかった。そしてその直後、彼女の視界を大胆にも遮ったのはアーチボルドであった。彼の姿を見ると忽ち、彼女の顔色は変わり、詰まらない音楽は無音となり、今まで何処にいたか知れない魂が主の身体へと舞い戻った。数秒の間、彼は彼女の驚きの視線を一所に捉え、口を歪め、どうにも合点のいかないといった薄笑いを浮かべながら石像の如く突っ立っていた。まるで彼の訪問などは、全く有り得べからざる奇跡的な事のようにサラには思われたのであり、余りの事に面食らってしまった程であった。我に返ったその瞬間、人混みの中から現れたアーチボルドは素早く彼女の手を取った。しかし、何故か彼自身もすっかり気を転倒させているらしく、先程の表情とは一転して強張ったものとなっていた。自分の眼前に姿を現したはいいものの、自分を何処かへ連れて行くという事が唐突に重荷になったような印象を彼女は受けたのだった。
世界の終わりかと思われる、大地震、大雷鳴の中から、惨めな現実がアーチボルドの胸にぼんやりと浮き上がって来た。何故、胸の底で自分の魂が震え、慄き、蠢くのが感じられたか。口を歪め、どうにも合点のいかないといった薄笑いを浮かべながらも、その後には気を転倒させ、強張った表情となってしまったのか。惨めな現実、それはサラがあの青年と婚約関係にあるという現実ではなく、それを破談にしてはならないという現実である。今宵の内に、アーチボルドは未遂を犯したという訳である。車までの道のりを彼は大股で歩きながら、彼女が取らせてくれた手を取ったままにしていた。こうした興奮、歩く為の息切れ、沈黙している心の悪さに二人はすっかり上気してしまった。彼の耳には米神の鳴る音が聞こえ、彼女の頬も薔薇色が差していた。軈て二人は、汗ばんだ手を互いに取り合っている気まずさに気が付き、手を離し、それを寂しく下ろした。その時、サラは自分の心が嘆きと苦しみとで消え入りそうなのを感じた。希望なくだらりと下された二つの手。取り分け悲しく思われたのは、アーチボルドが自分の手を離したと考えるより、例え彼が離さないまでも、恐らく自分の方で離しただろうという事だった。自分の手は、指輪が示す人物ではなくただアーチボルドだけを求めており、そしてそれが叶わぬ事であると重々分かっており、もう彼の手の中にある事を心苦しく思い始めていた為である。
サラが「帰る前に少しだけ、貴方の家に寄りたい」と言った時、彼の心臓は異常な程に昂った。だが一瞬の後には思い直し、戒めながら自分の愚かしい考えを追い払った。今度こそ、君は俺にどうさせたいのか、何故そんな事を言う気になったのか、何もかも打ち明けさせる必要がある。そして出来る事なら、俺に惨たらしい仕打ちをせずに、安堵を齎して欲しい。それは決して自尊心の為ではない。それはどんな事があろうとも俺の胸から消え去る事のない、君への友情と愛の為である。これ以上、俺を自惚れさせない為にも、その必要があるのだ。彼処から君を連れ出したのは単なる自惚れ、君も彼処から抜け出したい、あの野郎の元から逃れたいと思っているだろうと俺が勝手に考えた事なのだ。単なる自惚れだ、どうしようもない自惚れだ。アーチボルドはその言葉に対して何も言わなかったが、サラの望み通りに自分の家へ通した。彼は身体が熱くなって来るのを感じ、出窓へと近付いてそれを開けた。窓は通りに面していた。月の明るい静かな夜であった。車の音が響いたかと思うと、軈て辺りはしんと静まり返った。窓の直ぐ下には高いポプラの裸の枝が見え、掃き清められた通りの地面の上に細かな網目の影を落していた。左手には、明るい月の光に住宅街の屋根が白く照り映えていた。その前方には、木立の枝の交錯した隙間から塀の影が黒々と見えた。彼は月の光に照らし出された庭や屋根やポプラの影を眺め、心を蘇らせてくれるような爽やかな空気を肺に吸い込んだ。
その時サラはふと、アーチボルドが不意に窓辺からソファーの方へ近寄って来た事に気が付いた。彼女は彼の顔を見る勇気はなかったが、その瞬間、彼が自分を見詰めている事を、恐らくその眼差しは厳しく、その暗い瞳の中にはきっと怒りの色が燃え、頬は引き攣っているだろう事を全身で感じ取った。しかし、彼女を見下ろしている彼は、手を上げるどころか終始黙ったままであった。彼女は顔を上げた。正に青銅の心と大理石の顔とを持っていた男、それが今や表情に翳を差した唯の男であった。そういえば、彼は出所してから煙草を吸わなくなった。引っ切りなしに吸っていたのに、また、表情も殆ど崩す事をしなくなった。屈辱に耐え抜いた末に出来上がった強面。それを通して、同じ空気を未だに吸っている裏切り者の密計に周囲は一様に恐怖の念を感じている。サラはアーチボルドが一向に口を開く気がない事を看取し、自ら話を切り出した。最もそれは、彼にとっての他ならぬ翳りそのものであったが。
「誕生日に貴方が私に対して言った、『俺は君のような人と出会った事がない』って、どういう意味ですか?」
「それを俺に言わせるのか?」
「そうでなければ私は、このまま何処かへ行ってしまいますよ」
「言わなくとも、君はこのまま何処かへ連れて行かれる」
あの言葉は非常に敬意の籠もったものであったと今でも思う。君に対する憧憬は、俺の生涯で最も苦しかった瞬間に、俺の胸から自然に溢れ出たものだ。あの時、何か光明でも思い出すように、ふと君の事を思い出したのだから、俺は……。アーチボルドは空白の年月の起点へと意識を向けた。法廷で判事が話し続けている最中、窓の方からこの法廷の広がりを渡り、聞き慣れたロンドンの騒音が彼の耳元まで届いて来た。最早彼のものではない一つの生活、しかし、その中に彼が最も貧しいが執拗に付き纏う喜びを見出していた、一つの生活の思い出に彼は襲われた。凡ゆる季節の香り、彼の愛していた界隈、夕暮れの空、サラの笑い声、その服。この場で彼の成した一切の事の下らなさの加減が、その時、咽喉元まで込み上げて来た。彼はたった一つ、此処まで来たのならば自分を独房やらに打ち込む事なんぞどうだって良い、その前に彼女の笑った表情をもう一度この目で見たい、という事だけしか願わなかった。アーチボルドにとって唐突に世界が変わったようであった。やはり自分は彼女に恋をしているのだという事が、この場になって明瞭になったからであった。彼の耐え難い苦しみが、生まれてから今まで知らなかったような、度の強い歓喜に変わった。四年という時間を浪費する事を恐れなければ、もう何をするのも簡単に出来るように思われた。また、刑期が終われば、サラに再会出来るという確信が生まれると、判決を聞いている瞬間にも、胸の裂けるような苦痛は少しも感じなくなってしまった。アーチボルドはこの場にいない彼女を信用した。もう他人を疑う事に熟嫌気が差していた。後から思うと、それ程に心を開いて話したのは唯の一度もなく、それどころか彼女と殆ど言葉を交わした事さえなかった。入所する前夜にも身体をひしと抱き合い、毎秒ごとに近付く牢獄への時刻に何かを囁き交わした事もない。しかし、彼女は会いに来た。看守の手によって開けられたドアの奥には、サラが彼を透かし見ていた。気弱な灰色の虹彩、古風な美しさ、近付き難いところがなく、それでいて重味がある。そこで彼女は微笑んだ。その笑顔が余りに突然で、新鮮であどけなかった為、それまでの長い凋落を殆ど吹き飛ばしてしまった。
「俺が務所にいた時、一度、君が訪ねて来た事があった。俺は君を早く帰らせようとして……だが俺は出所する日まで、君がまた俺を訪ねて来てくれるんじゃないかと思っていた」
「『君が来ても刑期は縮まらない。早く帰れ』って、貴方が言ったから行かなかったんです」
「確かに俺は言ったな。覚えているよ、何もかも」
刑務所でサラにそう言った時のアーチボルドの険しい表情は、自分の内気さに打ち勝とうと向きになったからであった。最も、彼が言いたかったのは何か別の言葉だった。彼女は別れの言葉を言いながら、今にも泣き出しそうな風情を見せた。その言葉をよく吟味してみれば、別に大した意味を持っていないか、極めて曖昧な意味しか持っていないのだが、それでも彼にはそれが並々ならぬ深みと、誠実さと、善良さに溢れた言葉のように思われた。そして、その言葉と共に彼に向けられた、若い艶やかな、垢抜けた服装をしたサラの眼差しは、すっかりアーチボルドの心を捉えてしまった。彼は黙ったまま彼女を眺めていた。いや、その顔から彼は目を離す事が出来なかった。俺が此処にいる理由、それは俺が堅気ではないからだ。裏切り者が悪い訳ではない、密告される因を持っている俺が悪いのだ。君とは違う人間だ、分かるだろ、こんな所で屈辱に耐えなければならない選択を俺はしたんだからな。そう思うと、彼の念頭にはこれがこの人の見納めだという事しかなく、殆ど生気のない屍のようになってしまっていた。来てくれてありがとう、俺は……こんな俺でも君を愛していると、そう努めて言おうとしたのだが、それが何だかぎこちない言い方になってしまい、聞く者にはその反対を言っているように取る事が出来た。アーチボルドは自分を独房へ連れ戻すノックが来るのを恐れながらも、もうこれ切り会えないかも知れないという考えが脳裡に焼き付き、どうにもならなかった。不意に彼は、今日までの数年が数百年であれば良いと思った。サラの顔が一度も胸に迫って来なければ良かったのにと思った。この人を愛さず、この人を心に掛けず、この人の為に呼吸をせず、幾度も酒の力を借りてこの人の名を懐奥深くから引っ張り出さなければ良かった。手に入れ易い女なんぞ幾らでもいたのに、何故自分はこの人を選び、この人の心を望んだのか。
アーチボルドは軈て出所したが、彼は自由になったその日から三ヶ月以上も彼女に会っていなかった。ずっと彼は彼女を訪ねるつもりでいたが、何か神秘的な予感といったものにいつも引き留められてしまっていたのである。少なくとも、アーチボルドには近い内に起こるであろうサラとの再会の印象がどんなものになるか、何としても想像する事が出来なかった。彼は些か恐怖の念を覚えながらも、時折その場の情景を心に描く事を努めてみたが、ただ一つ明瞭であった事は、その出会いが重苦しいものとなるであろうという事であった。彼はこの四十八ヶ月の間に、自分が初めて彼女の姿を見た時、その顔から引き起こされたあの最初の感銘を、幾度となく思い浮べていた。しかも、受けた感銘の中にさえ、余りにも多くの重苦しさがあった事を改めて思い起こしていたのであった。彼女と話はしないが時折合わさる視線、彼は一体どんな人だろうかという探りを入れているようなものと、異性に対する僅かな熱が籠もった視線が、彼の心に余りにも恐ろしい作用を及ぼしていた為、その頃の単なる追憶すら成るべく忘れようとしていた。このサラの顔そのものには、常にアーチボルドにとって何か悩ましいものが隠されていた。独房にて物思いに耽っている時に、その感じを限りない憐憫の情として認識したが、それは事実その通りであった。出会ったばかりの時から、彼の心に激しい憐憫の苦痛を呼び起こしたのである。この情と相手に対する苦痛の感銘とも言えるものは、今まで一度も彼の心を離れた事がなかった。いや、今でも離れてはいない。それどころか却ってその激しさを増しているのであった。しかし、孤独の中で理解をしたものだけでは未だ不満足であった。思い掛けずにサラが姿を現した一瞬、恐らく一種の直感によってでもあろう、アーチボルドは自分自身に対する言葉に何が不足していたかを悟ったのである。そうだ、恐怖だ、彼女に対する恐怖なのだ。俺は彼女とは幸福になれはしない。こんな無辜な人を、俺は幸福には出来ない。彼はその瞬間にそれを完全に直感したのである。一人の女性をこの世の何ものよりも深く愛し、或いはそのような愛の可能性を心に描いていた男は、屈辱の後にその事を眼前に突き付けられたのだった。
「俺は君のような人と出会った事がない。君のように純粋で、教養と良心がある人とは。君には普通の人生を歩んで欲しいと思っているが、その為にはまずレニーの元から離れなければならない。いや、レニーだけではない。彼の傍には何たって、腰に拳銃を差した俺がいるんだからな。そんな野郎共の傍に、君はいるべきじゃない」
アーチボルドは相手の顔から燃えるような目を離さずに、言葉を続けた。サラはこの言葉をある種の驚きを込めて心に留めたが、取り上げはしなかった。私の騎士、哀れな騎士。幸福に背を向けられ、呼吸をする毎に私との距離を測っている。彼女は忽ち他の凡ゆる希望を諦め、現在の全き幸福の中に身を任せてながら、重々しい調子で言った。彼女がこの質問をした時、その心の中には一種特別なものが生まれた。まるで何か新しい特別な想念が脳裡に燃え上がり、堪え切れずに両眼に閃いたかのようであった。
「『前途は何もかも明るくて、素晴らしいものだ』と、私に言ってくれませんか。貴方の言葉なら、私は信じる事が出来るんです」
アーチボルドはぎくりと身を震わせた。心臓が凍て付く思いであった。しかし、彼は衝撃を受けながらもサラの顔を見詰めていた。この娘がもう既に一人前の女になっていた事に気が付き、妙な感覚であった。言葉は考えを隠す為に与えられたものであると彼は思っていたが、眼前の彼女はそうではないのだ。其処に彼女の高潔さがあるのだが、彼にはそれが拷問宛らに思われた。別離は今直ぐに起こる、だが勿論彼は未だその別離をどう迎えるべきか考えていない。それにそんな時間もない、頭の中には何かが忙しなく轟いているし、心は彼女に惹かれる。俺が言いたいのは、自分が君を愛したという事なのだ。君を愛する事が俺にとっては少しも無分別な事ではなかった、決して無分別な事ではなかったという事だ。君は何も知らないのだ。
「何故俺にそんな事を頼むんだ」
「貴方は他の人とは違いますから」
「違う?」
「顔立ちも、服装も、歩き方も──何もかも。何故貴方のような人が、あんな人に仕えているんです?」
アーチボルドは緩やかに目を伏せた。サラはその目に激しい苦悩の色がある事に驚いた。とても同じ人間の目とは思う事が出来なかった。レニーに仕え始めた頃の彼は、卑劣な事をするならもうとことんまで卑劣な行為をやらなくてはならない、ただ勝ちさえすれば良いのだ、と自分に言い聞かせていた。そして、殆ど一度も卑劣な行為を妥協した事はなかった。そうする内に彼女と出会い、すっかり度肝を抜かれてしまったが、それでも卑劣さを加減する事はなかった。彼女が身を落とし、自分のような荒くれ者を相手にしてくれようとはただの一度だって真面目に信じた訳ではない。しかし、万が一の場合を考え、既に自分の一部と化している卑劣さをどうするか、ずるずると引き伸ばしていたのであった。サラと一緒になる為にはやはり金、全ての心を獲得するのは金の力だけであると悟った愚かなアーチボルドは、卑劣な事をするくらいならとことんまで卑劣に振る舞うべきだ、と彼はその頃毎日の如く自己満足を感じると同時に、幾らか恐怖を覚えながら、繰り返し自分に言い聞かせていた。一旦卑劣な事をする以上やり抜く事だ、と彼は絶えず自分を納得させていた。俺は全てを手に入れる、金も権力も彼女も、周りの連中のように俺は決して尻込みなんぞしない。しかし、レニーのサラに対する恐喝、鉄格子の中での日々、彼女の縁談……彼女を失い、これらの出来事に打ち拉がれた彼は、その無駄とも言える言い聞かせに足元を救われていた事にやっと気が付いたのであった。それは俺が卑劣漢だからだ、サラ。レニーがどういう人間か、そんな事は大した問題ではないのだ──愛の終わる時が其処まで迫っている。空気を愛でる長い葉にある季節が来て、生きとし生けるものの上にも同様の季節が来て、濡れた草木の葉も色が変化しつつある。愛の終わる時が其処まで迫っている。二人の悲しい魂は憔悴し窶れ果てていた。情熱の季節が過ぎ去る前に別離が訪れようとしている。俯く額に一つの接吻と一滴の涙を残す事はもう出来ないのであろうか。

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