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I AM HOPING AT THE GATES



小さい頃から同じ夢を見続けるというのは、とても奇妙で薄気味悪いものだ。だが大人になっていくにつれ、その夢に対して興味を持つようになった。年に一度見るか見ないか、という頻度だが、全く同じ内容。そして出てくる同じ人の顔。ぼんやりと靄がかかったみたいだったのが、最近になってはっきりと見えるようになった。男だ。ブラウンの瞳の男。最初は横顔で、自分の存在に気づくとこちらを向く。そして微笑むのだ。綺麗だが、何処か生意気そうな笑顔だ。そして男が何か自分に言うが、声は聞こえない。そして手を差し出す。私はその手を見つめたまま──起きる。いつも、ここまでだ。

肌寒い早朝。出歩いている人は少ない。ゴードンは川沿いの道を歩いていた。まだ朦朧としている頭を冷たい空気で覚ましながら足を速める。仕事だ。今日も仕事をして終わる。ただそれだけの、何もない一日だ。無性に苛立ったゴードンは後ろから近づいてくる足音に気がつかなかった。
「わっ!」
ゴードンは手に抱えていた書類が風に舞って飛んでいくのを見た。モーニングランの最中の人とぶつかってしまったのだ。ゴードンはすぐさま川の方へ身を乗り出したが、先に動いていたのは相手の方だった。川の中へ入って行き、浮いている数枚の紙を拾い始めた。ゴードンはその背中を見た。全ての紙を拾って、ゴードンの方へ戻って来る男をゴードンは、見た。何処かで見たことがある。だが何処で──ゴードンは思考を止めた。男が濡れた用紙をゴードンに差し出したのだ。
「すみません」
その用紙を受け取るとき、男と目が合った。まだ若い、青年だ。整った顔立ちの、男だった。ゴードンの目に映った瞳は、瞳の色はブラウンだった。
「こちらこそすまない」
彼は夢の男だ。ちゃんと覚えている。何度も会ったから。
「私の家はここから近いんだが──お礼をしたい」
ゴードンは無意識にその書類を抱きしめた。まさか会えるなんて思ってもみなかった。澄んだ朝の風が青年の髪を揺らした。デジャヴだ。だが夢で見た、というより、現実で見た気がした。何年も、いやもっと昔だ。君は、君は私の、大切な人だったのか?青年は笑った。愛想笑いだった。