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ADORE YOU



それはとても素朴な言葉だったが、ゴードンにはとても熱烈な言葉に聞こえた。ブルース・ウェインの珍しく真剣な眼差しが自分だけに注がれていることに喜びのあまり胸が鳴った。今、彼の瞳には自分だけが映っている──長年、自分が片想いをしていた彼の瞳にだ。ゴードンはそのウェインの言葉に対し、返事をした。どう返事をしようか、沢山の言葉が頭の中に浮かんだが、口から出たのはとても短く、素朴な返事だった。そのゴードンの言葉を聞くと、ウェインはくしゃりと笑った。その彼の表情にまたゴードンは目を奪われたが、ウェインは終始不安だった。ゴードンには想像も出来ない──街で一番の人気者の彼が、精神を張り詰めさせて我を失いかけているなんて。ウェインはゴードンの手に自分の手を重ね、指を絡めた。
「これでジムは、僕の恋人なんだな」
今までの関係より、少し違う。"恋人"という、はっきりとした関係だ。そんな関係に、自分は興味もなかったし、なったとしても何処か他人事のように感じていた。だが彼に出会って、彼を好きになると、言葉で表したくなる関係になりたくなったのだ。真逆自分がここまで本気になるとは、正直思いもしなかった。こんなに満たされた気分になるのは初めてだよ──ウェインはゴードンの肩に顔を埋め、頬を緩ませた。これからはずっと、ジムの"恋人"として隣にいることができる。"恋人"なんだ、僕は。彼だけの。そして僕の"恋人"は、彼だけだ。
「どうしたんだい?」
空いた方のゴードンの手が、ウェインの頭に添えられた。そしてブラウンの髪にひとつ、キスをした。幸せだ。ゴードンはそう思った。
「夢、みたいだ」
見たこともない、自分にとって甘美過ぎるものだ。ウェインはゴードンの肩越しにある海を、眺めた。