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I NEED THE SUN TO BREAK



今までに何度か撃たれたことはあったが、こんなに殴られたのは久々だな、とゴードンは半ば嘲笑うように心の中で思った。本部長になる前から知っていたことだが、本部長ともなると"こんなこと"、日常茶飯事ならしかった。バットマンが現れ、ゴードンが本部長に昇進してから"こんなこと"、は起こった試しがなかった。前兆もない。今思えば彼が事前に対処してくれていたのだろう。だが今回ばかりは自分で対処しなければならない。自分のことも彼に任せていては駄目だ──そう思っていたのが、一発の銃声で覆された。足を撃たれたのだ。これでは自力で立てないし、腕も自由が利かない。そしてまた不幸は続き、眼鏡も役に立たなくなった。床に横たわったゴードンは部屋にある窓の外を見た。もうすぐ夜である。彼はまだ当分現れない。もしかするとこのまま現れないかも知れない。彼も忙しい。ゴードンは浅くなった呼吸を深くした。 大きな爆発音で意識が戻る。何度も繰り返し起こる爆発音にゴードンは鼓動が早くなるのを感じた。窓の外を見ると夜だった。彼が現れる夜、彼そのものだ。
「バットマン、」
彼が来た。まだ姿は見えないが、確かに下の階で暴れている。ゴードンの耳には沢山の悲鳴が届いた。やはり彼は強い──こんな自分を見ると彼は何て言うだろうか。想像、したくないな。気がつくと下の階から聞こえていた騒音は収まっていた。不気味な程に静かになった建物に、自分が今彼を呼ぶ声を上げたら響き渡るだろう。彼もすぐ見つけてくれる筈だ。だがゴードンは何もしなかった。このまま見つからない方が、いいのかも知れない。自分の身も守れない警官なんて、彼には必要ないから。ゴードンは目を伏せた。
「俺を信じるな」
闇に覆われている、暗い方を見た。そしてゴードンは唾を飲み込んだ。まさにゴードンが見ている闇から彼が姿を見せた。見たところ、怪我はなさそうだった。そのことに安堵すると同時に、また彼に会えたという現実を見たゴードンは思わず表情を緩ませた。見つけてくれた──ゴードンの中で彼の存在は特別なものであり、何が起ころうと彼から離れたくないという気持ちがあった。
「私は信じるよ」
ゴードンは無垢な笑顔を見せた。バットマンは何も言わなかった。ただ黙ってゴードンを抱き上げ、消えた。