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HEAVEN



カチッカチッとライターから火を出す音がした。ゴードンはベランダの方へ頭を動かして、その姿を見る。ウェインが珍しく煙草を吸っていた。彼はゴードンの前では気を使ってか、吸わない。夜明けを知らせる、薄いブルーの光が視界を飾る。美しくついた筋肉、彼の長い指、他人を射る鋭い目はゴードンからは見えない。何を考えているのかも、見えない。ただ彼の逞しい背中にある傷痕が微かに見えるだけだった。

苦いキスだ。大好きなコーヒーのものとはまた別の苦さを鼻と舌で感じる。お互いの指を絡め合って、空いている方の手でお互いの頬や髪に触れる。まだ肌寒く感じる季節でも、二人でいれば何ともない。ウェインの小さく開いた口から煙が姿を見せた。それをゴードンの口に入れるようにキスをした。苦いキスだ。だが嫌いでもない。何度も何度もキスをする。お互いが渇望しているものはすぐ目の前にあるのに、まるで一生手に入らないような、これが一瞬の夢のような、そんな気がして虚しくなる。その感情をかっ消すように、目に見えない煙を頼った。

幸せだ。二人でいれば何処だって天国に思える。幸せだ──だがそう思っていても、確かに心の奥で虚しさを感じている。それは知っている。だからその部分に何かを詰めたい。だが二人は考えても、わからなかった。今はただここに自分と愛する人がいるということだけが、二人にはわかっていた。