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それは騎士団員の名簿を見た時の事である。殺害された者の経歴を削除している最中、たまたまサラの頁がスネイプの目に留まった。職業、家族構成、出身校などが記されてあるその上、彼女の名前の横には生年月日が印字されてあった。そういえば、誕生日を知らない。今更にそんな事を確認し合う仲でもない為に当然だか──ほんの好奇心が働き、スネイプはその数字に闇色の瞳を転じた。九月一日。その数字は新学期が始まる日であり、偶然にも、スネイプの誕生日の月日を入れ替えた数字であった。九月一日。一月九日。一般に誕生日は特別なものと考えられており、周りの人間が挙って祝うものである。そんな日を心底馬鹿馬鹿しいと蔑んでいたスネイプであったが、その日、九月一日だけは、彼の中で段々と特別な色を帯びて来た。その日にサラは生まれ、ホグワーツに入学し、己と出会い、友となり、闇祓いとなり、共に一つの任務を遂行する事となったのだ。これまでの人生は辛いものであったが、不思議な事に、それでも未だ息をしている。互いに、未だ息をしている。九月一日。恐らく君は生まれたその日に、この事を後悔する。

新学期。小さな新入生が組み分け帽子によって寮に分けられている中、スネイプの脳裏には終始サラの姿がちらついた。嘗てこの新入生の中に彼女はおり、どんな気持ちでもって組み分けを待っていたのか。どんな気持ちでもってこのホグワーツに入学したのか。幼かった彼女はどんな表情を浮かべ、どんな事をあの心に秘めていたのか。幼かった彼女はこの誕生日に、どんな言葉を家族から掛けられたのか。そして、その言葉にどんな表情を浮かべたのだろうか。それとも……何の言葉も掛けられず、一人で、何故生まれて来たのかを自問自答し、しかし、結局その訳が分からずにこの一日を過ごしていたのだろうか。今更何をする訳でもなかった。スネイプはただ誕生日おめでとうと伝えるだけの手紙など書きたくはなかったし、サラも祝われる事を苦手としている人間である。
「スリザリン!」
サラの穏やかな灰色の眼の中に煌めく善良の精神。思考や感覚の短い測鉛で測れぬ程に深い、その心に差す陽光は、魂の電光の下に絶えず躍動する。彼女の存在の爽やかさはその心から溢れ、それが愛によって生み出され、光と動きの明らかな混合による温かい色合いで、この生気のない空虚な冷たい大気を染める。――誕生日おめでとう。スネイプはスリザリンの席へ移動する小さな後ろ姿を遠い目で眺めた。誕生日おめでとう、サラ・バラデュール。善人だが、無上に孤独な友よ。私はたった一つの事を望む。清らかなその心に真の平和あれ。真の知を持つ者、その胸が悲しみに暮れる事なかれ。サラ・バラデュール。君が生まれたのは、決して悲劇ではないのだ。この私にとっては……。