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I raise my flag



濃霧が太陽を隠す。冷気を含んだ風が吹き、辺り一面何も見えなくなった。後ろから部下の声が聞こえたが、ドレークは足を止めることをしない。腰に差したサーベルに手をかけ、正義のコートを靡かせながら一歩一歩進んだ。恐ろしく何もない島だ。あるのは湿気と荒野、そしてこの視界を遮る灰色の霧。ドレークは深く息を吸った。
泥濘んだ地面を背にその人は倒れていた。目は開いており、胸も小さく上下に動いている。ドレークは近寄った。白い肌は泥と血で汚れ、唇は乾き、生え際からのきめ細かな髪は水分を含んでいるようだった。紛れもなく、自分が探し続けてきた人物。元海軍将校。海賊。取るべき首が、今ここにある。ドレークはサーベルから手を離し、傍に膝をついた。
蒼い瞳がゆっくりとドレークを捉えた。そして一度だけ瞬きをした。敷き詰められた睫毛の先に小さな水滴が付いている。何も読み取れない表情。何を秘めているか悟られない心。その蒼い瞳がドレークを捉えて離さない。海賊は懐から短剣を取り出した。黒ずんだ手。ドレークは蒼い瞳から逃げるようにそれを見ていた。
「功はここに」
水の流れるような声。静けさの中に刃を持っている。その声が聞きたかった。海賊は柄を自分に向けている。たちこめる霧が海賊の足元にまで差し掛かった。ドレークはそれを取った。ずっしりとした短剣を片手で持ち、最後に一度その瞳を見た。だが蒼い瞳はもうドレークを映してはいなかった。ドレークはもう片方の手を海賊の首元に置いた。
胸の上で短剣の先端を置いた。そして力任せにそれを押し込んだ。柄までの刃を全て刺し込む。するとドレークは自分の手の上に額を乗せた。全ての血を流してしまえ。ドレークは柄や首元から綺麗な手を離し、空を仰ぎ見た。霧の中から赤い太陽が姿を現わす。濃霧は瞬く間に燃えるような赤色に染まった。

Imagine Dragons - Radioactive