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Under a clouded sky



ウェスカーは見た。輝く朝が山々の頂を至高の日の光で愛撫するように触れ、金色の顔で緑の森林に口付けし、青い小川を天来の錬金術で黄金色に変えたかと思うと、やがて粗野な雲がやって来て、汚い雲霧で太陽の面を踏み付けにするのを。温かな太陽であった彼女は、常に煌々と輝き己の顔を照らした。だが悲しい事に、彼女はほんの一時しか己のものではなく、今はもう大空の雲の為に彼女の姿は見えない。だからといって私は君を蔑みはしない。嘗て私が持った愛は少なからずそうであった。だが果たして君は、どうだろうな──この私を信じるな。君はもう直ぐ死ぬ事になる。絶望した中、生にしがみ付く事も出来ず死に絶える事になる。私は君を守らない。私が君の名を思い浮かべる事も、口に出す事もない。もし再び会える日が来るならば、君は私にその銃口を向けるだろう。その時は──天の日さえ曇るのだ、地上の太陽も姿を隠す。ウェスカーは次第に高まっていく内なる雷霆の如き声の響きを、恐怖と満足でもって感じた。そして、我が身に後から後からと浴びせ掛けられる猛烈な声をも聞いた。

サラは手に持っていた無線機を助手席にそっと置いた。以前、彼女の頭上に広がっていた無限に遠く高い蒼空は、急に低い、一定した、頭を押さえるような丸天井に変わった。何もかも明瞭であるが、しかし永久な神秘的なところは綺麗になくなってしまった。無線機で伝えられた事とは、自分の最愛である彼の陰謀と裏切り、そして彼の訃報であった。二人の味わった最も清らかな幸福は、折々の豊かに溢れる喜びは、静謐の中に消え去ったのである。感じた喜びも、今では何にもならない。神聖に思えた愛も幻であったかのように消え、サラが以前見ていた色鮮やかな景色も今となっては自分に何も齎さないものとなった。サラはアクセルを思い切り踏み、ガードレールを押し除け、目の前にある崖から墜落してやろうかと思った。しかし彼女にはそれを実行する勇気がなかった。彼の面影が、好きで堪らなかった彼の言葉や表情が、未だに自分の中で生きている事を犇犇と感じたからであった。

Loony - Some Kinda Love