『この世界が変わる頃』
全2頁 捏造注意



イスカを正式に政府下へと置く為、人事局へのデータ登録が必要になり、スパンダインは彼女の簡単な履歴書を作成する事となった。
と言っても公的記録など何一つ残っていないイスカの事、殆どはスパンダインの捏造による物で構成され、後は健康診断の結果を同封。

CP9長官が直々に製作し、しかも保護責任者ともなれば、これほど信頼の高い物は無い。完璧な証明書として、どこへでも提示できる。
そもそも出身地によっては出生記録などを残していない所も多々あり、他の人より審査は厳しくなるが、そういった者は政府にも沢山いた。


「じゃあ、誕生日も祝った事がねェのか…今度ちゃんと、お祝いしような?」

「ん、イワッタって、なぁに?うまれたひ、しらないとダメ?」

「いやいや、決して駄目じゃねェさ!よし、じゃあ勝手に誕生日、決めちまうか」


俺達の出会った日にしよう!と言ったスパンダインは続きをスラスラと書き進め、保護した島の名前や家族構成などを順調に記載していく。

年齢は平均身長や平均体重から割り出し、イスカの記憶が どの辺りからあるのか、何回 季節の移り変わりを覚えているかで決定した。
勿論、栄養失調による発育不全も考慮し、それ等が回復傾向にあり今後の支障も無いという、軍医の報告書に笑みを浮かべながら。


「出来た!さあ、イスカ、海軍本部まで行こうな?登録用の写真を撮って貰って、お偉いさん方と顔合わせだ」

「おでかけ?」

「そうだ、二人っきりでの お出掛けだぞ〜!時間があれば、帰りに どっか寄って遊ぶか」


イスカは余所行きの可愛らしい洋服に着替えさせられ、スパンダインと共に船へ乗り込む。彼女にとっては、この地へ来て初の島外だ。

船窓から海を眺めては喜び、誕生祝いの意味を教えて貰っては喜び、そうして居る内に海軍本部マリージョアまで辿り着いた二人。
だが、あれ程 船内で迷子にならないよう気を付けろと言っていたスパンダインが、船着き場につくなり上司を見付けて走り出してしまった。


「いやァ、これはこれは大将殿、奇遇ですなァ!聞きましたよ、先日も大艦隊を一網打尽にしたとか」

「あ…チョ、チョータンッ!」


聖地と呼ばれる この地に、用のある軍関係者は多い。港にも多くの軍人が犇き、小さなイスカは簡単に人の波へと飲み込まれてしまった。
自分の声が届かなかった事に肩を落とすが、兄妹二人きりの生活では単独行動も日常だったイスカ、迷子くらいでは めげないのだ。

そしてイスカは、決して方向音痴では無い。島内で一番に目立つ建物であり、制服を着た、一目で軍人だと解る者達が揃って向かう場所。


「ん〜、あっち?よし、いこ!っんぶ」


狙いを定める様に指差し、早速 歩き出したイスカだが、勢いのままに誰かの足元へと ぶつかってしまった。そう、彼女は よく人に ぶつかるのだ。
子供の注意力が散漫という事もあるが、イスカの身長が丁度良く大人の視界から、それが長身の者であれば ある程に消えてしまう小ささなのだ。


「ご、ごめんなさい…あ、くましゃん!」

「子供が何故、こんな所に…俺を知って居るのか?」

「うわ〜、かわいい、おボウシれすね〜」

「……帽子の事か」


そして彼女は、まだ能力を扱い切れていない。本来ならば自然系の能力で避けられる事態も、まだまだ意識していないと発動しない様子。
イスカの ぶつかってしまった男、バーソロミュー・くまは、そんな彼女の能力を全くに知らないけれど、それでも興味深い人物だと目を細めた。

決して子供に好かれる風貌で無い事は自覚している、いくら帽子に興味を惹かれたからと言って、これ程までに一瞬で懐かれるものかと。


「んでねー、イスカあっち、いくの!きっとチョータンいると、おもうんだァ。カイグンのエライひと、だもん…だから、ボウシちょーだい?」

「的を得ている、なかなかに賢いな…だが帽子はやらない」

「あとね、イスカきょう、タンジョウビきまったの!うまれたひ、なんだって。いちねんブジで よかったねって、オイワイっての、すんだって」

「そうか…それで、帽子をくれという話に繋げるつもりか?」


イスカは単に嬉しくて報告をしただけ、贈り物を貰える日だという認識は無いのだが、それでも王下七武海であり嘗ては暴君と呼ばれた男。
この海に海賊として名を馳せている其の彼が、小さな少女に随分と困惑させられている、そんな珍しい光景が皆の注目を集める事となった。



スリラーバークで既に夢主と絡めたいと思っていた彼が、61巻で あんな勇姿を見せるとは…
感動したんで長々と書いちまったっつう…続きます→

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