白ひげ一味設定 お相手マルコ
空は曇り、海は凪。風は無いけど、航海は まあまあ順調らしい。
今日一日、何も無かった。
「はぁ…この無気力は、どこから来るんだろう」
「お前は…無気力が来るんじゃあ無くて、気力が湧いて来るんだ」
「そうかぁ、じゃあ無気力は常に、そこにあるのかぁ」
「まったく…何時も何時も、面白い事を言う奴だよい」
なまえは人を飽きさせ無いねェ、なんて続けるマルコは、本から目を離さないまま。私と違って退屈じゃあ無いらしい。
「んー、敵でも攻めて来ないかなぁ」
「何だよい、平和で何よりじゃねェか」
「……う〜ん、でもさー」
それ以上、言葉が続かなかった。
そりゃ、そうだ…平和で何より。世の中みんなが願ってる事だもん。
オヤジの体調も良好、ナースの機嫌も良い、煩い海軍の監視船も姿が見えない。確かに良い事なのだ。
海賊だからって世の中を恐怖の渦に追い込んでやろうとか、人を掻っ攫って沈めてやろうなんて思っちゃいない。
「……私、どっかおかしいのかなぁ」
「頭だろうなァ」
「失礼な!……って言いたい所だけど、うん…確かに頭おかしいかも」
「……反論しろよい」
平和な世界を想像してみた…ら、何だか怖くなった。
敵も味方も関係無くなって、みんな仲良しで、みんな幸せ。
それって凄く怖い…不気味だとか、そういう意味じゃ無くって…私の中では、ただ ひたすらに恐怖でしか無かった。
そう言ったらマルコは漸く本から視線を上げて、優しそうな顔して、そうして私の頭を柔らかく撫ぜてくれる。
「そりゃあ、天国や極楽に似てるな…死も無い、苦悩も無い」
「おなかも減らない?」
「減らねェかもなァ」
それで、ただ“幸福”しか無いんだって。
マルコは博識で、何の本でも片っ端から読む。私には、さっぱり解らないけど。
でも、これだけは解る…何でも望む物、全部が簡単に手に入っちゃうなんて、そんなの…ちっとも面白そうじゃ無い。
「欲しいモンは自力で手に入れたいよぉ」
「まあ、職業柄なァ」
宝が目の前にドンとあっても駄目なんだ…古い地図を辿って、敵と戦って、苦労して得るから楽しい海賊稼業なのに。
「なまえ…あんま考え過ぎるなよい、退屈なんだろう?」
「うん、退屈だぁ…天国も、今も」
「安心しろ、俺達ァ天国には行けねェから」
だって僕等は海賊だから
普段使わない頭、無理して使うと熱出すぞーなんて笑いながら言うマルコを見てたら、おなか減ってきた。
ここは天国でも楽園でも、極楽浄土でも何でも無いから、死もあるし苦悩もある。だから戦いも冒険もある。
マルコの色気は、どこから来るの!?
あんたと一緒なら地獄でも良い!と思う執筆者。