恋の始まりはいつだっけ? | ナノ
相合傘に書いた君の名前

放課後の黒板は、生徒達の落書き帳。
ヒーロー基礎学終わりの反省会ついでに、謎のお絵かき大会が開かれている。
私のお題は「チーター」で、なかなかの画伯ぶりを発揮した。もちろん下手な方の意味である。

「なまえやばいわ……逆にどうしたらこんなのが描けるの」
「大丈夫、みんな違ってみんな良いのよ」
「二人共馬鹿にしないでよね」

もう、とふざけたように笑う。
それぞれが画伯すぎて誰も呆れを通り越し、真っ白でぐちゃぐちゃに汚れた黒板を黒板消しで黒く塗り替えていった。
ふと手に取ったピンク色のチョークで、消したばかりの黒板の隅に相合傘を描きだす。
ハートを大きめに書いて、三角を横長気味に、そして1本棒を貫く。ここまでで一筆書きの、誰もがよく知る、何の変哲もない相合傘だ。

「出久くんとお茶子、っと……」
「も、もう!なまえってば、」
「上鳴と耳郎ちゃんでもいいかな」
「恥ずかしいから!!」

いずく、おちゃこ、きょーか、でんき。
平仮名で両片思いカップルの名前を書き込んだそれは、まさに女子高生らしさを滲み出させていた。
ヒーロー科にそんなもの必要なのかと思ったりもするけれど、ヒーロー科でも私たちは女の子だったりするんです。
ピンク色のチョークを持つ私の後を追って、全員が黄色やオレンジ、青や緑と言った色とりどりのチョークを手に収めていく。
いっそあの子とあの子を書いてみようか、なんて悪戯な会話は聞かないふりで、星だの花だの細々とした飾りを相合傘に書き加えた。

「っできた!轟くんとなまえでーす」
「我ながらいい感じのハートのかき具合ですわ、」
「なかなかイケてる!」

お茶子とやおももと三奈の楽しげな声の元へ視線をずらすと、先程までの名前をすべて消して、二倍ほどの大きさで右側に私、左側に轟くんの名前が書かれていた。
なにこれ、と顔に熱が集まるのを確かに感じながら、だだっと足音を立ててその落書きの前に立つ。

「、もう……恥ずかしい、ってば……」

林檎みたいな顔だね、なんて、全力で馬鹿にしてくる透ちゃんを叩きたかったけど、どこに頭があるのかわからないから叩けなかった。
びば青春。
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