恋の始まりはいつだっけ? | ナノ
それはまだ、愛ではなくて

食事中の会話とは、実に自由なものである。
周りから聞こえてくる会話は、最近のアイドルがどうとか、どのヒーローが好きだとか、誰が強いとか。
私たちは全く別種の会話を繰り広げている。

「今日の議論は“恋”と“愛”の違いについてだよ、なまえ」
「難しそうな話だね」
「永遠のテーマだよ!」

きらきらとした目で話を進めていくお茶子をさらりと受け流しながら、うどんを咀嚼する。
大好物であるうどんを目の前に、目移りなんて出来ない。
その間にもお茶子は、なんやろ……と頭を悩ませている。
若干15歳の私たちには難しい議論な気がするけれど、彼女に付き合うべく私も思考を回す。
何が違うのか、って私だってわからない。
この時間に意味はあるのだろうか。

「あー! 思い出した!」
「何が、」
「恋は自分中心、愛は相手中心! 八百万さんからの受け売りやけどね、」

これが答えだよ、って笑うお茶子に、なるほど、と頷いてしまった。
悔しいけれど、これはやおももの言葉。うんうん。
やっと答えが出た、と彼女は嬉しそうにご飯を食べる。話したり考えたりしてばかりいたからか、まだあまり進んでいない。
私ももう一口うどんを口に入れて、味わう。

「じゃあお茶子のあの人への気持ちは愛だね」
「そうかな、」
「誰が見てもわかるよ」

出久くんが大事で仕方なくて、彼のためになにかしてあげたいっていうのが伝わってくるからね。
頑張って、と私の今日のデザートのショートケーキをお茶子に差し出した。
いいの!? と眩しい笑顔を私に向ける。
お腹いっぱいだからどうぞ、と苦笑いをすると、お茶子はありがとう! と嬉しさ全開のお礼をした。

さっきの会話、“恋”と“愛”の違いについてを思い出す。そうだとすると、私のこの気持ちは何なのだろうか――そんな事が頭を支配した。
少なくとも、それはまだ、愛ではないと思った。
私は相手中心で動けるほど人間もできていないし、気遣いもできないと思う。
とてつもなく難しい話を飲み込むように、麦茶を胃に流し込んだ。
prev next
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -