はあ、と深いため息と共にしゃがみ込む。
ピンク色とラベンダー色のレターセットを持ったまま、まだ購入するか悩んでいるところだ。
美人さんに取られてたまるか、と意気込んで手紙を書くことにしたのはいいものの、普段そんなことしない私は、そもそもレターセットなるものを持っていなかった。
「轟くんは赤っぽいやん」
「いや派手でしょ、しかも季節感……」
「無難に白なんてどうでしょうか?」
ああああ、と叫び声をあげたところでお茶子が勧めてきた赤のレターセットに目をやると、季節感無さすぎレベルだった。今はまだクリスマスには程遠い。
轟くんはピンクとかラベンダーとかそんな雰囲気しないし、やおももの言う通り白にしようかな……と箔押しでキラキラの星座があしらわれた、白っぽいレターセットを手に取り、レジへと一直線に向かった。
.
買ったはいいものの。
「何を書けばいいのよ」
口に出すつもりはなかったのに、ぽろりと口から零れ落ちた。
放課後の教室、たまたま日直だった私は、掃除を終えてから便箋を広げて一人でペンを回す。
書けねえ書けねえと叫びながら椅子をがたがた揺らしている様は、ひどく滑稽だと我ながら思った。
すきですー、なんてゆるっゆるに机に落書きしては消す。
机には書けても紙には書けない。
独り言では言えても本人には言えない。
――そんなもんか。
「……ま、いっか」
結局何を書けばいいのかわからないし、紙いっぱいに大きく「すきなんだよ」とぶつけるように描いた。
初めて書いた恋文、受け取ってください、轟くん。
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