恋の始まりはいつだっけ? | ナノ
君の姿が見たくて

「ああ、もう……! 人が多い!」

私は今、最初の難関にぶつかっている。
そもそもスタートが狭すぎること、そこから難関なのだ。
ぎゅうぎゅう押し込まれて身動きも取れない。
少々汗臭い、とか思ったけど気にしてられないぞ。

――パキ、

わいわいと煩い参加生徒の声の中から、確かに「パキッ」と凍る音がした。
初っ端から凍らせてくるなんてやるなぁ、轟くん。
流石だよ。
私の頭の中は「ヒーローになりたい」と、「轟くんを一目見たい」なんて、一つは煩悩に塗れている。
本気の体育祭に相応しくないのはわかっているけど、それが私の頑張りの原動力になるのだ。
個性・スクリューを発動させて、どんどん追い抜かしていく。
目の前にはやおももとか尾白くんとか爆豪くん。
戦闘の方へ来たんだ、と強い緊張感とも取れる感情を胸に、更にスクリューの出力を上げた。

私の個性スクリューは、条件発動型に近いもの。
右足を強く踏み切って決められた時速で一瞬でも走れば、踵部分に発動するものだ。
もちろん、好きな場所に出すことも出来る。
手の平に発動させて風を起こすことも出来るし、早く走ることも出来る。
少し飯田くんのと似てるかもしれない、と今気づいた。

さあ、まだ最大スピードの三分の一程度。
まだまだ行ける、進め。
私はいつだって、轟くんをこの目に写したかった。

.

そんなこんなで終わった体育祭。
後先考えなかった私は、障害物競走でキャパを起こして棄権した。
轟くんは、緑谷くんとの戦いで使った炎の個性を決勝では使わず、二位に甘んじてしまった。
彼ならもっと行けた、とは思ったけど、使わなかったのは彼の意思だ。
彼への好き、と同時に憧れの気持ちも強くなった。
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