恋の始まりはいつだっけ? | ナノ
甘酸っぱい気持ち

その日の昼食はストロベリーのサイダーとドーナツと冷凍のベリーミックス。
どう考えてもおやつにしか感じないメニューだけど、私にとってれっきとしたお昼。
甘酸っぱい冷凍フルーツを噛み砕きながら、
食堂の席を一人で占領する。
混み時になんて迷惑な、と思うが今日は一人飯なのだから仕方が無い。

「酸っぱ、」

ベリーミックスの中のラズベリーがとてつもなく酸っぱくて、思わず顔を顰める。
味を洗い流すかのようにストロベリーサイダーを一気に飲み干す。
喉がピリピリとする、いかにも炭酸、という辛さ。
嫌になっちゃう、とふと人の多い通路側へ目を向けると、轟くんと何処か違う科の女の子が仲睦まじく――正しくは女の子が少し一方的な気もする――昼食を取っていた。
何あれ、とまたもや顔を顰める。
しわが増えそうだ、なんて呑気な頭とは裏腹に、鼓動はどくどくと早鐘を打っている。

状況を見れば、轟くんがお昼に誘われて断りきれなかったことは明白だった。
それでも、彼があの子と食事をしている――という事は紛れもない事実。

「っ、なにこれ……」

なんで自分がこんなに動揺しているのか、
どうしてこんなに泣きたくなるのか、
そんなのは分かりきっていた。
ただの嫉妬。
私ができない轟くんへのお誘いをいとも簡単にやってのけるあの子と、そこから何も行動をできない自分と、そんなに嫌そうにしていてもあの子と一緒にいる轟くんに対して、甘酸っぱい、いや甘さなんてない、ただ酸っぱい感情を抱く。
最後に関しては私は彼の恋人でも家族でも何でもないわけだし、口出しできないことなのに。
初めての感情はまだ難しくて、キャパオーバーしそうになる。
個性を使いすぎた時のような、倒れそうな程の不快感と胸の締め付け。

――こんなのしらないよ、なにこれ、どうしろって言うのよ

そんな気持ちを置き去りになんてすることは出来ずに連れたまま、場所を教室に移した。

これは、私の初めての嫉妬。
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