合言葉は…?
急いで扉を閉めたため、バタン、と少しばかり乱暴な音が立った。
そんなことも気にせず、自分のベッドに腰掛けクリスマスカラーのラッピングの方から開ける。
『MerryX'mas、なまえ。
元気にしてる?私達は元気よ!
貴方、必要ないっていつも黒いインクしか使わないわよね……
女の子らしくカラーインクでも使ったらどうかしら?
母、父より』
そんな私の女らしさをからかうメッセージカードとともに、ワインレッドとスカイブルーとシャンパンゴールドのインクが入ったアンティーク調の瓶が同封されている。
まあ人を馬鹿にして……でもありがとう、なんて頭の中で言うため届きもしないお礼をしながら、シャンパンゴールドの箱に手を伸ばす。そういえば、インクもシャンパンゴールドだったけれど、私の髪の色と合わせていたのかも。
「レギュラスじゃなかったら、なんか虚しい気がする」
虚しいのなんて嫌、と緊張した手つきでゆっくりとリボンを解いていく。
中は、当たり前だけどメッセージカードと――プレゼントと思われる香水だった。
『MerryX'masって、直接伝えたかったです。
毎日なまえのことを忘れずに過ごしています。やっぱり、少し寂しいですね。
プレゼントは、貴方から僕の匂いがするのって、なんだか夫婦みたいでいいと思ったんです……だから香水にしました。毎日つけてくださいよ!
それと、誰よりも貴方を愛しています。
言ってみたくなっただけですよ。
R.A.B』
読み終わった瞬間、ぶわっと涙が溢れてきた。嬉し泣きなのだろうけど、涙が出るのに理由なんていらなかった。
夫婦みたい、とか誰よりも愛してる、だとか嬉しい他なかった。
今すぐにレギュラスの匂いを感じたくなり、もらった香水を手首とローブの裾に吹き付ける。ふわりと漂う香りは、まさに彼そのものだった。
レギュラスに抱きしめられたような感じがして、何度か彼と抱き合った時のことを思い出す。
暖かくて、いい匂いがして……なんて、誰が言っても同じような感想になってしまうのだけど。
今はそばにいないレギュラスの温もりを感じてしまい、ただ、とてつもなく彼と連絡を取りたくなった。
両親からもらったシャンパンゴールドのインクと机の上に放り出されていた羽ペンを手に取り、すぐに手紙を綴り始めた。