幸せの代償
時間は経ち、今日はレイブンクロー対スリザリンのクィディッチの試合の日になった。
きっとレイブンクローを応援するべきなのだろうけど、シーカーであるレギュラスのことを応援したいから、内心は彼を応援することにした。
「レギュラス、がんばれ……!」
ひゅん、とハイスピードで空を切る彼の視線の先には、金のスニッチがある。
黒と緑をはためかせながら手を伸ばす彼のすぐ側には、レイブンクローのシーカーが迫ってきている。
負けるな――そうスリザリン生と私が祈ったその時、レギュラスの手に金のスニッチが掴まれる。
「レギュラス・ブラックがスニッチをキャッチしました!」
実況の声と同時に、スリザリンから歓声が上がった。
私も歓声をあげたかったけれど、一応敵なのでそんな訳にはいかず、隣にいた友人と同じ落胆した顔を作る。
選手達も解散したので、レギュラスの所へ走る。
どこにいるのかなんてわからないのに走るあたり、なんて無鉄砲な事をしたのだと反省をする(後悔はしていない)。
走り続けていると、がやがやと宴会でもやっているかのような騒がしさを感じた。
きっとスリザリンが今日の試合の祝賀会でもやっているのかな、と思い部屋を覗くと、案の定祝賀会が開かれていた。
きっと胴上げでもされたのか、疲れた様子のレギュラスが入口付近にいた。
「レギュラス、ちょっと」
レイブンクロー生がこんなところにいるなんて知れたら困るので、なるべく小声で彼を呼ぶ。
なんですか、と顔をぱっと輝かせながら小走りでこちらへ来る彼に、笑顔で手を振る。
お疲れさま、最後かっこよかった、とだけ伝えて彼の頬を両手で挟み込む。
ありがとうございます!と心底嬉しそうな声色で私の手首に手を添える。
一瞬、今この時がふたりだけの世界として切り取られたような気がした。