急に彼女ががくりとうなだれる。
涙は止まる気配を見せなくて、彼女の頬へと流れ落ちる。
「本当に、本当にこれでよかったんですかね……」
そんな風に問いかけたって誰も答えてはくれない。いつもだったらなまえが返事してくれるのに、今はもうしてくれない。
絨毯に彼女の紅を残して、ソファに横たわらせる。
クリーチャーを呼ぶと、彼は驚き目を丸くして彼女を見つめる。
「坊っちゃま、これは……?」
「今は、なにも聞かないでくれないか」
赤くなった目元から察したのか、わかりました、と返事をする。
数分ほどの沈黙を破り、クリーチャーに話しかける。
「さあクリーチャー、行こうか」
――あの洞窟へ、案内してくれ。
「はい坊っちゃま、」
家族を、僕に良くしてくれていた全ての人を守るために行くから。
なまえ、少しだけ待っててください。
そう願いながら、自室をあとにした。