「まず、なにがあったんですか?」
「電車の中で眠ってしまって、気づいたらここに……」
私このまま帰れなくてもいいや、なんてよぎった。
少しづつ落ち着いてきて、よくよく考えたら戻る必要も無いじゃない。
「遅れましたが、あなたの名前を聞いても?」
「あ、ごめんなさい。みょうじなまえと言います。」
「ありがとうございます。」
プシュー、と煙の吹き出す音がした。
「着いたようですね、降りましょう」
彼――レギュラスは、一緒に行動してくれるみたいで、心が弱っていた私には、つい嬉しく感じた。
映画で見たとおりの道に馬車。
不思議と信じられない、なんてことはなく馴染んですらいる。
「……ここが校舎です」
ぐるぐると考えているうちに、校舎についたらしい。
「わざわざ案内してくれてありがとう、レギュラス」
そう残して馬車を降りたはいいが――これからどうすればいいのだろう。
当然住むのは寮なわけだが、私は本来この世界に居ないはずの人物だ。
「ダンブルドア先生のところに行くべきかな、制服もないし……」
でもここどこやねん。
ってエセ関西弁使ってる場合じゃない、ほんとに。
「みょうじさん、ついてきてください」
え、とつい零した。
「ここがどこかもわからないんでしょう。校長のところまで案内くらいしますよ」
「あ、ありがとう……!優しいのね、レギュラスって。」
「ここまで送ってきたので当然ですよ、」
「私、きっとここで過ごすんですよね」
――きっと、来るべくしてここに来たのだと思うし。
頭をポジティブに切り替えて、校長室へ向かった。