03


「まず、なにがあったんですか?」
「電車の中で眠ってしまって、気づいたらここに……」

私このまま帰れなくてもいいや、なんてよぎった。
少しづつ落ち着いてきて、よくよく考えたら戻る必要も無いじゃない。

「遅れましたが、あなたの名前を聞いても?」
「あ、ごめんなさい。みょうじなまえと言います。」
「ありがとうございます。」

プシュー、と煙の吹き出す音がした。

「着いたようですね、降りましょう」

彼――レギュラスは、一緒に行動してくれるみたいで、心が弱っていた私には、つい嬉しく感じた。
映画で見たとおりの道に馬車。
不思議と信じられない、なんてことはなく馴染んですらいる。

「……ここが校舎です」

ぐるぐると考えているうちに、校舎についたらしい。

「わざわざ案内してくれてありがとう、レギュラス」

そう残して馬車を降りたはいいが――これからどうすればいいのだろう。
当然住むのは寮なわけだが、私は本来この世界に居ないはずの人物だ。

「ダンブルドア先生のところに行くべきかな、制服もないし……」

でもここどこやねん。
ってエセ関西弁使ってる場合じゃない、ほんとに。

「みょうじさん、ついてきてください」

え、とつい零した。

「ここがどこかもわからないんでしょう。校長のところまで案内くらいしますよ」
「あ、ありがとう……!優しいのね、レギュラスって。」
「ここまで送ってきたので当然ですよ、」
「私、きっとここで過ごすんですよね」

――きっと、来るべくしてここに来たのだと思うし。
頭をポジティブに切り替えて、校長室へ向かった。
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