がたん、
「、ん……」
目を開けるとそこは、どこかの電車のコンパートメントのようだった。
――あれ、わたしコンパートメントなんて乗ってない。
不安で冷や汗が流れてきて、辺りを見回す。
アンティーク感のある壁が、まず電車のようには見えない。
どこか、映画で見たような汽車のような。
荷物はすべて手元にある。
「ここはどこ……?」
やっとの思いで絞り出した言葉も、疑問にしかならなかった。
「……あの」
「はい!!?」
控えめな、細い声のした方を見ると、黒髪の美少年がこちらを見ていた。
英語で話してるあたり、ここは日本ではないの?
「君――ホグワーツの生徒じゃない、ですよね」
「ホグ、ワーツ?」
「そう、ホグワーツ魔法学校です」
聞いたことのあるような、ないような名前だった。
「私、千代田区立の高校1年で……浜松市に向かうための電車に乗っていたはず、なんです」
「ちよだくりつ?こうこう?はままつし?……なんでしょう、それ」
――は?
え、待って、なんで?どうして通じないの?
「すみません、ここってどこなんですか?」
「イギリスですよ。ホグワーツ魔法学校行きの汽車の中です。」
……イギリス!??!
どこかで見た汽車。聞いたことのある名前。イギリス。あとひとつは――
「あなたの名前って……」
「レギュラス・ブラックです。状況は理解できました?」
ええ、と返事をこぼし、頭を整理する。
どこかで見た汽車は――9と3/4番線。
聞いたことのある名前は――かの有名な者達の学んだ学校。場所はイギリス。
そして――レギュラス・ブラック。
――私は、ハリーポッターの親世代にトリップしてしまったようだ。