「ねえ、ちょっと待って!」
「早くしろよ!」

ふは、とシリウスが笑いながら私を急かす。
置いてかないでよと彼の手を掴み、今度は私がずかずかと前に進んだ。

「あ゙ー!もう!」

いきなり叫びだしたと思ったら、彼が私の手を引いて、隣を歩く。

今日は付き合ってから初めてのデート――ホグズミード村に来た。
本当は抜け出して行こうという話になったのだけど、私が反対した為、ちゃんとしたルートで来ることになった。
ホグズミードには普段からあまり来ないから、何が見たいどこに行きたいというのは特になかった。故に彼に行き場所は全て任せている。
私の前を行く彼は、三本の箒行こうぜ、なんて振り向き笑って、私の手を引く。
振り向いたの彼の目には、確かに私が映り込んでいた。

その光景を見て、ふと付き合う前のことを思い出す。
私は彼の女癖が荒いところが好きではなかった。付き合う時だって不安な気持ちもあった。

でも、今は。

今は私だけをその目に写してくれている。その事実がどうしようもなく愛しかった。

「ねえ、」

ほろりと口から零れ落ちた。

――チャラ男君、こっち向いて。
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