▼求める前に捕まえろ。

「彼氏欲しい」
「好きな人欲しい」
「あの子より可愛くなりたい」
「振り向いてもらいたい」
「告白しようかな」

――そう言っている女の子たちに告ぐ。全員が全員、そのための努力、アプローチを惜しまずにいますか?

.

求める前に捕まえろ、とは私の座右の銘。
口でうんたらかんたら言う前に捕まえてみせろ、という私の生涯における覚悟でもある。

「勝己くん、おはよう! 好きだよ!」
「あァそうかよ、ならちょっと黙れや」

好きな人――彼氏に対してだってそうで。
何もせずに「かまってほしい〜」なんてぶつくさ抜かす暇があったら、彼氏である爆豪勝己くんに愛を伝えたい私の主義だ。

朝から、というか毎日勝己君は冷たい。
おはようのついでに好きだよ、も足しておくと、黙れやなんて返ってくる。
そんなんじゃモテないぞ。モテてほしくないけど。
ぎっと私を睨みあげた彼にによによと笑いながら、これあげる、とクッキーを差し出す。

「自信作だから食べてみ」
「誰がてめぇの作ったモンなんか――うぐっ」

失礼な勝己くんにお仕置きだ、とばかりに取り出したクッキーを押し込む。
これ実は……辛子入りクッキーなのだ。
生地には七味唐辛子が練り込んであって、中にはわさびソースを閉じ込めてある。
自分的にはとてつもなく辛くして自信作だったはずなのに、平然とした顔で食べる勝己くんをぽかぽかと叩いた。
辛い! っていう顔が見たかったのに。

「こんなんじゃ辛いなんて言わねぇよバーカ」
「ひっどい……」

私の心の中を読んで言葉を選ぶ彼は余裕綽々。
偶にはその余裕、なくしたいと思った私の気持ちとは一体。

そんな馬鹿丸出しの思考に割り込んできたのは、いきなりすぎるリップ音。
唇に感じる柔らかい感触に、キスしてるんだ、なんでどこかにありそうな小説のように分析する。
勝己くんもこんなことできるのね、私感激。
感動していると舌が入ってきて、私の口に侵入してきたのはきっとさっきのクッキー。
名残惜しげに唇を話すと、口内に激痛が走る。

「かっっら!! 何これ?! 私が作ったクッキーかよ!!」
「ハッ俺の余裕をなくそうなんて百万年はえーんだよ」

ロマンチックなやつ? なんて期待して勝己くんに感動を覚えた十数秒前の自分を殴りたい。



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