その後、私は家まで一直線に帰宅した。
制服を脱ぎ捨てて、靴下もつま先から抜き取り、大きめの――勝己くんが前に置いていったTシャツを着た。

「ほんっとう、あんなこと言っちゃうなんて最悪……」

ぎゅっと握りしめたTシャツの襟元から、ふわりと微かに勝己くんの匂いが漂った。
激しい自己嫌悪に駆られて、ぐっと下唇を噛み締める。
薄く滲んだ血が鉄臭くて、気持ち悪さすらある。

――嫌いだ。
勝己くんの事すら考えれない私なんて。

ごめんね、ずっと思ってる。

.

ホームルームが始まる数分前。
ガヤガヤと皆が騒ぐ教室に「さあさあ皆! そろそろ席につこう!」という、飯田くんの良く通る声が響く頃合。
ぴろん、とメッセージアプリの通知が私のスマホを震わせた。

「麗日ー、通知鳴ってるよ?」
「ありがとう!」

すっと出てきた通知をスライドしてメッセージを確認すると、なまえからだった。

「『今日は諸事情あって休みます、先生に伝えておいてね』、か……」

ぼそりと送られてきた文を呟くと、嘘、誰か休み? と三奈ちゃんを始めとした数人が私のスマホを覗き込む。
なまえが休むみたいと告げる。
それを上鳴くんや峰田くんが聞いていたようだった。
「今日はなまえが休みだってよー」と、瞬く間にその事がクラス中に広まっていく。
別にまずいことはないんだけど、私には少し気になることがあった。

――爆豪くんの事だ。

爆豪くんを視線に捉えると、彼は「テメェなんでか知ってるか」と上鳴くんに詰め寄っている所。
何かあったんかな。
というのも、昨日の放課後、なまえから相談を受けた。
彼女はかつてない程に悩んでいるようだった。
無理やり笑って帰っていったけど、隠しきれていなかった悲しみとか辛さとか、そんなのが見え隠れしている表情。

「……後でもう一回連絡してみよ」

がらりとドアを開けて入ってきた相澤先生にぴしっと姿勢を整えつつ、そんなことを考えていた。



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