他愛ない


「弔くんは、私自身を好き? 愛してる?」

好きな人に向けるなら、他愛のない質問。
私にとっては、大きな賭けなのだ。
個性を発動させる。
法は――いいえ、と答えることは許さない。
はい、と答えなきゃ死ぬ。
答えてもそれが嘘だったら死ぬ。
いいえと答えたら死ぬ。
答えなくても死ぬ。
いっそ私から殺してみるのだってありでしょ?

「ああ……はっ、いきなり、すぎたかな……答えてくれたら、焼くなり煮るなり、う、好きにして」

はやく、と目で合図する。
弔くんの口から、確かに言葉が紡ぎ出される。
彼はわかっているんだ、これが私の個性だって。
死刑にだってできる個性。

「……なまえが好きだよ、なまえ自身が、手に入れたいくらいに好き、愛してる。
なァ……お前も俺を愛してよ、」

個性は発動しなかった。
何度試しても出来ない。
それは――彼が私を本心から好きでいてくれてる、ということを示していた。

「はぁ、……っ弔くんには、敵わないなあ……好きだよ、私も弔くんが、弔くん自身が……もう殺していいよ、」
「……無理だよ、」

ぱっと私の首から両手が離された。
ぼろぼろに崩された首が痛い。
どうして、という気持ち任せに勢いよく起き上がる。

「好きなやつ殺すのはまたでいいよ、今はお前が俺のことを好きって言ってくれた嬉しさだけでいい」

弔くんはゆっくりと、俯き気味に私を引き寄せた。
どくどくとうるさい鼓動が二人分合わさる。
ひどく安心するのは、もしかしたら赤ちゃんがおかあさんの鼓動で安心するのと同じ原理なのかもな、と彼の腰に腕を回した。


  
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