離さない


「さっきから言ってるだろ……なまえが好きだよ、好きすぎてこのまま殺したいくらいに、」

押し倒されて馬乗りされている私の首に手をかける。
触れた五本指から、じわじわと痛みが広がり、皮膚が剥がれる感覚がした。
赤い肉は私からは見えないけど、きっと相当痛々しい。

「そのまま殺せばいいよ、」
「そうかよ……」

私の言葉に、ニヤッと興奮と恍惚の混ざった笑いを浮かべた。
ぐぐっと私の首にかかった両手に力がかかる。
ひゅ、と呼吸を確保した私の気道が締め付けられる。
苦しい、止めて、
そう思ったけど、同時に止めて欲しくないとも思った。
今止めてしまったら、これから先ずっと思いを伝えられない気がする。
それだけは嫌。

「っは……うぇ、ひ、」

息苦しさが増して、生理的な涙が流れる。
でももう、どうでもよかった。
殺されることで個性なんて関係なく私自身を好きになってくれるのかもしれないならいいじゃないか。
命なんて、元々捨てているようなものだ。

「なァなまえ、本当に好きだよ、お前が全部、」
「そ、……かよ、」

弔くんはきっと、私の首をゆっくりと締めている。
いつまで経っても死なないのは、やっぱり少しぞわぞわする。
もうすぐ私も死ぬのだと思う。
だから私からだって、行動を起こさせて。

「は……っ、弔くんは、私自身を好き?愛してる?」

ねえ弔くん、答えてみせて。


  
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