感想 


58.黒を司る処刑人
 2011/08/01 - 辛口感想
ジャンル:現代異能バトル
長さ:長編(連載中)

第四章まで拝読いたしました。


いいかげんなあらすじ:
ごく普通の女子高生・紗希は、『魔界の住人』に襲われていたところを、『処刑人』ギルによって助けられる。
以降、紗希は『魔界の住人』に命を狙われるようになり、ギルと『魔界の住人』との闘いに巻き込まれていく。


 登場人物の目的と動機が不明
 設定がよくわからない
 なにが起きているのかわかりづらい
 起承転結がしっかりしている





少年漫画を彷彿させる、現代異能バトル小説です。
バトルシーンの比率が高く、しかも主人公が簡単には敵に勝てないので、とても展開が熱いです。

ただし、登場人物の目的・動機、設定がよくわからないため、物語に興味が持てませんでした。
また、なにが起きているのかわかりづらいため、バトルシーンを読むのが億劫でした。
ストーリーの構成がしっかりしていて、戦闘シーンも凝っているため、上記の欠点がとても惜しいです。


 登場人物の目的と動機が不明

この作品の第一、二章を読むのが苦痛でした。
原因としては、登場人物の目的と動機が不明な点が挙げられます。
キャラクターがなにをしたいのか見えてこないため、物語に興味が持てなかったのです。

ギルはなんで『処刑人』をやっているのかわからないため、感情移入できませんでした。
そもそも『処刑人』がなんなのか書かれていないため、物語についていけない面がありました。

紗希はギル以上に、なにをしたいのかわかりません。
ギルたちに付いていっては足を引っ張っているだけなため、主人公なのにひたすら不可解な存在でした。

しかし、スカルヘッドや桔梗は動機・目的ともにしっかりしているため、彼らが登場する第三章は比較的おもしろかったです。


 設定がよくわからない

物語に関心が持てなかった原因としては、設定が十分に説明されていない点も挙げられます。
『魔界』、『処刑人』、『執行者』、『機関』など、物語の核となる設定さえ明かされていないため、キャラクター同士の会話についていけなかったのです。
また、構成はしっかりとしているのに、設定がよくわからなかったせいで、物語が茫洋としている印象でした。

説明不足だけではなく、設定の甘さも気になりました。
まず、紗希が『魔界の住人』全体に目を付けられた理由について、イマイチ腑に落ちません。
また、犯人不明の猟奇殺人事件が連発しているのに、町の人々にまったく危機感がない点も気になりました。


 なにが起きているのかわかりづらい

この作品のメインであるバトルシーンを読むのが億劫だったため、物語を楽しめなかった面も考えられます。
なにが起きているのかわかりづらい文章であるせいで、バトルシーンが読みにくかったのです。

原因としては、主語・述語・所有格が抜けがちな点が挙げられます。
文章の構成要素に抜けがあるせいで、一読しただけでは文意を判断できない箇所があるのです。

また、行動や出来事の前振りとなる文章が抜けているせいで、なにが起こったのかわかりづらい箇所もありました。
たとえば、前置きなしに「なにをされたのかわからない」と書かれていた場合、
読んでいるほうは「なにかされたことさえもわからない」ため、唐突な印象を受けてしまったのです。


 起承転結がしっかりとしている

登場人物の目的と動機、そして設定が不明なせいで物語の牽引力に欠けていますが、ストーリーの構成自体はうまいです。
ひとつひとつのイベントの起承転結がしっかりしているため、設定の出し惜しみや説明不足さえ解消されれば一気におもしろくなりそうです。

また、主人公が事件を解決したり、敵を倒したりするために、それなりに苦労しているおかげで、読みごたえもあります。
やはり、主人公が必死に困難を乗り超えようとしている過程は燃えます。

さらに、目的も動機もわからないわりには、登場人物の個性もはっきりとしています。
そのため、登場人物に感情移入できれば、キャラクター小説としても楽しめる作品になりそうです。
実際、行動理念がはっきりとしているスカルヘッドが出てくると、とてもわくわくしました。


第四章で、やっと主人公(ギルと紗希)が抱えているものが見え始めます。
設定の出し惜しみをせず、これらがもっと早い段階で明かされていたら、読むのがひたすら苦痛だった第一、二章も楽しんで読めたかもしれません。
第一章も第二章も、ストーリー自体は起伏に富んでいるため、物語に入り込めさえすれば、かなりおもしろくなりそうです。

また、「主人公がなかなか敵を倒せない」点はとても魅力的です。
しっかりとした強みがあるので、短所が克服できれば、一気に化けそうな作品です。


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