感想 


36.恋一夜
 2010/09/02 - 中辛感想
ジャンル:時代風恋愛
長さ:短編


いいかげんなあらすじ:
戦国の世、とある滅びゆく国。
落城前夜、忍者の青年は、主である姫に「お逃げください」と懇願するが……。


本編の長さのわりに、説明が多すぎる印象を受けました。
しかし、心理描写がしっかりとしているため、迫力がありました。
また、古風な文体がストーリーや設定にとても合っていました。





恋は障害が大きければ大きいほど燃えるといいます。
非常に単純でありながら越えることの難しい「身分差」は、代表的な恋の障害でしょう。

というわけで、身分差がとても効果的に使われているため、とても燃える作品です。
6,000文字強とかなり短めな作品ですが、主従の恋のクライマックスのみを描いているため、とてもドラマチックな物語となっています。


印象的なシーンが効果的にトリミングされているのですが、やや説明が多すぎるかもしれません。
忍者の生い立ちが長々と語られているため、物語の勢いがそがれてしまっているのです。

また、忍者と姫が出会い、恋慕を寄せる過程を数千文字で描ききることは、ほぼ不可能でしょう。
だったら、忍者と姫の今までは、ばっさりと切り落としてしまったほうが、個人的には気持ちいいです。

それに、この作品では説明以外の部分からも、二人の事情を読みとることができます。
言葉の端々から、物語の背景をにおわせることができているのです。
そのため、説明の不要感が高かった可能性も考えられます。


説明で流れが悪くなっている面はあるものの、終末に向かうにつれ、迫力の増していく作品です。
忍者の姫に対するむき出しの想いがあらわになっていき、同時に、悲壮感も増していくからでしょう。
心理描写がしっかりと書き込まれているため、ストーリーがどんどん盛り上がっていったのだと考えられます。

また、硬派なのに華やかさもある文体が、ストーリーや設定にとても合っていました。
この作品には。時代背景をにおわせる小道具はほとんど登場しません。
ですが、古風な言葉の選び方によって、その時代特有の空気がよく表現されています。

あと、悲恋ですが、満足のいく結末でした。
別離の後、片方がいろいろな感情を抱えながらも生きてゆくラストは、個人的に好みだったりします。


そんなわけで、主従、身分差、悲恋という単語にピンときた方に、オススメできそうな作品です。


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