neta倉庫*無法地帯注意!

プロシュートが倒れていた時の状態や、ここはどこで五十鈴は何なのか。とにかく現状把握に必要な情報を五十鈴は惜しげもなくプロシュートに公開した。
そして思い知ったのは自分がとてつもなく困った状況に陥っているという現実だった。

ここはイタリアから遠く離れた日本。どういう訳か、プロシュートが記憶している西暦よりも数年進んでいる。
スタンドと言うモノはおらず――しかしプロシュートのスタンドは正常に存在している――変わりに《炎》を扱う者がいること。

ブチャラティに敗北した時に負っていた傷は全て癒えていた。五十鈴曰く、発見時から外傷はどこにも見当たらなかったらしい。落ちて失われた筈の右腕もしっかり存在している。しかし酷い貧血になっていた、とも。
傷は塞がったのか、もしくは無かったことになったのか。しかし流れて失われた血は戻らず、貧血を起こしていたのではないか、と五十鈴は言った。

とにかくわからないことだらけでどうしようもなく、プロシュートも慎重に五十鈴に自身の情報を公開した。
驚いたことにただの無力な少女かと思われた五十鈴は裏社会にある程度精通していた。

五十鈴は所謂《探偵》と呼ばれるのが近い、と言う。五十鈴はありとあらゆる《探し物》をする。
人探しから物探し。警察でも手に負えないような殺人事件に協力したり、その他未解決事件によく手を貸していた。

結構優秀な《協力者》である、と彼女は笑った。

そんな中でマフィアないしギャングに関わることもあるという。
最もそれらは全て紙や電子媒体を通して行われることで、五十鈴自身が関わっていると言う情報は全て規制されており《協力者》が《滝沢五十鈴》と決して結びつかないようになっている。

場合によってはマフィアが起こした事件に手を出す時もあると言う。そんな少女はプロシュートに言う。

「《パッショーネ》と言うマフィア、もしくはギャングは存在しません。少なくとも私は聞いたことがない」

五十鈴は自室から持ってきたノートパソコンを操作して画面をプロシュートに見せながら話を続けた。

「今イタリアで勢力盛んなマフィアは、まず全てにおいて別格とされる《ボンゴレ》。キャバッローネやネロ、ベッチオ等の他組織とも同盟を組むイタリア最大手のマフィアです。ボンゴレの同盟でもあるキャバッローネもまた、イタリアでボンゴレの次に名のあるマフィアと言ってもいいでしょう」

五十鈴の話を聞いているとプロシュートの頭痛はどんどん酷くなっていくような気がした。

最大手と言うのにプロシュートはボンゴレと言うマフィアを知らない。他の組織もまた同様だ。
西暦も違う。組織の勢力図も違う。最後まで一緒に行動していた弟分の姿も無く、五十鈴もプロシュート以外は見ていないと言う。
たったこれだけの情報ではあるが、プロシュートの頭を痛めるには十分過ぎた。
ここは一体どこなのか。
死んだと思ったら生きていて、今生きている世界は自分の常識とはかけ離れた所にある。
プロシュートは直感した。自分以外のモノの一切を、全て失ったということを。
五十鈴が公開する全ての情報を信じている訳ではない。だが、プロシュートの、この直感だけは――きっと、恐らく――真実だ。

ギャングに身を置いた、スタンド使い。明日も分からない身の上だ。きっとベッドの上では死ねないだろうと覚悟はしていた。今までそうして生きてきた。他の仲間も同様だろう。
明日になったら顔馴染みがいない。明日は我が身か。覚悟を決めた一世一代。ギャングと言うのはそういう世界だ。
唐突に全てを失う。覚悟はあった。それは本当だ。悲しみはない。哀れみもない。
ただこのどうしようもない喪失感はどうすればいいのか。

『――大丈夫ですよ』

無言になったプロシュートに五十鈴が言う。
少し話して喉が疲れたのか、温かそうな湯気が立つ緑茶をゆっくりと飲んでいた。

『貴方を拾ったからには、ちゃんと最後まで面倒は見ますから。手を出すなら最後まで責任を持って手を出しなさい、とおばあさまにもキツく教えられたので。私はちゃんと、覚悟と責任を持って貴方を保護しました。だから大丈夫ですよ。貴方一人位、私にはどうってことはないです』

『だから先ずは、ここで身体を本調子にしてくださいね』と正に花が綻ぶような、そんな笑顔で自分の世話になれととんでもないことを言ってのけたお嬢さんにプロシュートの頭痛は酷くなるばかりだった。



プロシュート逆トリ4
2014/09/29 00:43 ( 0 )


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