「あの・・・」

通りを走る白塗りの乗用車、そのリアシートにちょこんと座っている雫は運転席に座るカンザキに声をかけていた。カンザキはハンドルを握りながらルームミラーに目を向け、居心地が悪そうな表情の雫を見た。その雫は目を動かし、隣にある何かを覆い隠している毛布を見ていた。それは暗にそれの正体を説明しろという意味であった。その何かは時折モゾモゾと細かく動き、その度に雫は怯えた眼差しでカンザキに助けを求めていた。そして、雫のそんなメッセージを見たカンザキはあぁ、と声を漏らすとブレーキペダルを浅く踏み込んだ。

「そう言えば、まだ紹介していませんでしたね」

そう呟いたカンザキは、カーブの手前で十分に速度を落とすと「ルーク」と何かの名前らしきものを呼んだ。その言葉が車内に聞こえた直後、毛布の塊が急に大きく動き出し、勢い良く蒼い何かが顔を出した。

「・・・何これ」

雫がそう呟いたのも無理はない。毛布の中から突然顔を出した何かには、大きな蒼い兎のような耳が頭の天辺に付いているからだ。頭自体も犬のような骨格をしており、口の先端にはマズルのようなものが付いている。後頭部には黒い4本の房と、蒼い毛に覆われた頭にはハチマキのような黒い毛の付いた何か、いや生き物は毛布から顔を出すと、隣で硬直している雫の方を見て首を傾げた。

「カンザキさん、この生き物は・・・」

『マスター、この娘はもしかして・・・』

ほぼ同時に、同じようなことを口にした雫とその蒼い何か。その息の合った動きにカンザキはミラー越しに笑うと、、車を何処かの駐車場に入れた。

「ルーク、その娘は雫さんだ。そして雫さん、こいつはルーク、ポケモンの一種ですよ」

「ポケモン?」

雄武返しのように聞き返す雫に、カンザキはえぇ、と短く答えるとミラーを見ながら車をバックで駐車スペースに入れていく。

「ポケットモンスター、縮めてポケモン。何かと謎の多い生き物です。特にこういったルカリオ種などの一部のポケモンはテレパシーによって人間とコミュニケーションをとることができます」

「あ・・・」

その時雫は、先ほどルークと顔を会わせた際に脳内に若い男の声が響いたことを思い出した。カンザキの説明が正しいのであれば、先ほどの声はルカリオのルークのものということになる。現にルークは不思議そうに雫の顔を覗き込むと、まるで犬のように鼻を鳴らしていた。

「ルークは私のポケモンで、そこそこ強いですよ」

「強い・・・ですか?」

「はい、雫さんのお母さんのポケモンと五分五分の実力です」

カンザキの言葉を聞いた瞬間、雫は自身の顔が強ばるのを感じていた。お母さん、それは幼少の頃から雫が愛焦がれてきた言葉であり、ずっと手にしたかったものである。同時に、憎んでいた。なぜなら幼少期ならまだしも、小学生になる頃には周囲の子供たちは両親の居ない雫を『異端』のものと見なし、事あるごとにそれをからかってきた。子供というもの純粋であり、また残酷である。自分達と違うものには容赦無く差別し、排他する。しかも、それは中学校まで続き、初めて会う他の小学校出身の者にも容赦無くその感情は伝染していく。その結果、先ほどの裏路地のように不良やその崩れに目を付けられ、度々雫は虐めの標的となってしまったからだ。

そんな雫にとって、両親とはずっと想い続けた言葉であり、同時にずっと憎んできた言葉でもある。

「カンザキさん」

雫は小さく彼の名を呼んだ。名前を呼ばれたカンザキは、ルームミラー越しに雫を見ると車を動かすことを止めた。そして、雫に先を続けるように指で促すと、周囲の安全を確認していた。

「両親が何で私を捨てたのか、教えてくれませんか」

少女の口から出た言葉は、カンザキとルークの動きを止めるのに十分な威力があった。まるで考える人のように額に手を当てたカンザキは、背後でじっと見つめてくる雫の視線を背中に感じながら少し考え込んだ。

(どうしたものか・・・・)

カンザキは十年前の出来事の当事者の一人だ。故に残りの二人の心情は痛い程理解している。理解しているからこそ、どう切り出すべきかを悩んでいた。だが背中に感じる雫の視線は、まるで皮膚にギリギリ触れるくらいまで煙草の火を近づけられたかのように感じられ、あまり長い時間、感じていたいものではない。しかし話さないままで終わらせても、きっと雫は諦めないだろう。そこまで考えたカンザキは、はぁ、と溜息を漏らすとブレーキペダルを踏んだまま、ハンドブレーキを引くとギアをパーキングに入れた。そして、ルームミラー越しに雫の目を見た。

「十年以上前、私の所属している機関はある実験を行いました」

徐に口を動かし出したカンザキの目に、雫の目がぶつかった。雫はまるで息を飲むかのようにカンザキのそれを見つめると小さく頷いた。

「それは伝説と謳われるポケモンの、無限と言われる生命力を利用した生体実験です。当時、私はその実験の主任研究員を護衛するように命令を受けました」

「・・・もしかして、その研究員が?」

「えぇ、あなたのお母さん、朝霧皐月博士です」

雫は、カンザキの言葉を耳にして小さく息を呑んだ。同時に、背筋を冷たい何かが駆け上がるのを感じていた。

「朝霧博士は輝くような黒髪と美しい蒼い瞳が特徴的でした、あなたと同じように」

雫の耳に、一昔前のようなナンパの文句が飛び込むが、それは彼女の脳に届く前に反対の耳から出ていった。それを知らないカンザキは、外を再び見回すと話を続けた。

「そして、その時の被験者が海神と称される大海の支配者、ルギアでした。博士はそのルギアにあるウイルスを投与してその効果や治療法を研究していました」

「ウイルス・・・ですか」

雫は意思とは裏腹に口から出る言葉を抑えきれずにいた。それだけカンザキの話す内容に興味があるからだ。そして雫のそんな目を鏡を介して見たカンザキは、一呼吸於いて口を開いた。

「殺人ウイルスです」

視界が激しく揺らぐのを、雫は密に感じていた。それは先ほどの路地裏での頭痛によるふらつきを遥かに凌いでおり、雫は喉が嫌に乾くのを自覚していた。殺人ウイルス、その言葉が何度も雫の脳内で繰り返されては消えていく。首筋と背筋に汗が伝い、呼吸が乱れていく。まるで貧血になったかのように視界がブラックアウトしていくのを、雫はまるで他人事のように感じていた。

暗闇に覆われていく視界の片隅に、心配そうな目で雫を見ているカンザキの目が映った。いや、それはルームミラー越しに見える世界ではあるが、それでも雫の失われかけた意識を引き止めるのに一役買っていた。雫はそれに「大丈夫です」と短く答えると、深く息を吸って落ち着こうとしていた。

「あんまり・・・そういった風に心配されることに慣れていなくて・・・」

「擽ったく感じるでしょう?」

額を伝う冷たい汗を、雫は手の甲で拭った。それを笑いながら見ていたカンザキは、意味深な言葉を発すると雫の顔色を見ていた。

「ですがこれだけは覚えていてください。あなたの両親も、そういう風にあなたを心配していたんですよ。決して『捨てた』とか言わないでください」

カンザキはゆっくりと、まるで聞き分けの悪い子供に言い聞かせるようにして言葉を区切って言った。それは聞きようによっては不愉快極まりない筈だが、今の雫にはそうは感じられず、むしろカンザキの言葉の意味を心に捉えていた。

果たして、それは本当に信用できるのか?

雫は口にこそしないが、内心そんな気持ちに支配されており、まだ見ぬ両親に対する疑心に徒に心が支配されていくのを自覚していた。

「両親のことが信用できませんか?」

内心密かに悩んでいた雫に、カンザキが話しかけた。彼はまるで見透かしているかのような目で雫を見ると、穏やかな表情で笑っていた。それに雫は曖昧な笑みを浮かべると、目を伏せた。

「そんなに心配するなら、何で両親は私の事を捨て・・・」

「雫さん」

「・・・別れてしまったんですか?」

少し悲観的な発言をしかけた雫を、カンザキは至極穏やかな口調で戒めた。それを耳にした雫は、親に叱られるという経験をしたことが無いために、叱られながらも何処か擽ったく感じていた。それを表情から察したのか、カンザキは肩を竦めてみせると、再び口を開いた。

「話を続けます。博士、皐月さんは殺人ウイルスを研究していましたが、そのきっかけはわかりますか?」

雫はカンザキの問いかけに首を横に振った。外では下校中の高校生だろうか、数人が通りを挟んだ反対側、駐車場の向かいにあるコンビンにたむろしていた。

「十年前、あるテロ事件が発生しました。それ事態は大した事はありませんでしたが、この影響はとんでもないもので、機関とNATO陣営は首謀者とそのテロ組織の撲滅を決定したのです」

「・・・・」

「しかし相手は生粋のテロリスト。何せ軍人や警察官とは違って、制服の無い組織ですから見つけるのに骨が折れます。しかも国内世論も早期解決を望んでいました。そこで当時の私の上司が、『極自然な病死に見える、或いは感染爆発に見える』ウイルスの制作を皐月さんに命じました」

雫の目にコンビニにいる高校生たちの姿が映る。彼らは誰もが楽しそうな、幸せそうな顔をしており、雫にはそんな彼らが少し憎らしく感じられた。もっとも、それを自覚したところで、何かが変わる訳でもないが。そしてカンザキはそんな雫にお構いましに、話を進めている。

「つまりNATOはテロリスト『かもしれない』人間の住む地域全てに、その殺人ウイルスをばらまいて大規模な臨床実験と人体実験を兼ねた、殲滅戦を計画していたんです。当然無関係の住人も死んでしまいます」

「そんな・・・私のお母さんがそんな事を・・・・・」

まさか自分が大量殺人に手をかけた人間の娘であろうとは、雫は頭に手を当てたまま俯いていた。それに対してカンザキは首の骨をゴキリと鳴らすと、腕時計を見ていた。そして、現在の時間を確認すると再び先を話し出した。

「ですが皐月さんは自身の研究が殲滅戦に使われることを知り、全ての研究データとサンプル、資料を破壊して被験者であったルギアと、ホウオウと呼ばれるルギアと対になる伝説のポケモンを連れて機関から逃げ出しました」

カンザキはそこで話を切ると、ふぅと小さく息をこぼした。既に時刻は18時近くになっており、辺りは薄暗くなってきている。これから徐々に暗くなり、寒くなっていくために心の内は少し暗く感じられた。

「・・・つまり、お母さんはその、危ない研究と使う目的を知っていたから?」

ふと雫の頭の中で、そのような考えが芽生えていた。どうやらそれは話の核心であるらしく、それを聞いたカンザキはミラー越しに雫を見て頷いた。

「皐月さんはウイルスの製法と殲滅戦というNATOのスキャンダルを知っていたんです。だからこそ機関やNATO諸国は皐月さん達の身柄の確保に躍起になっていた。そんな状況で、赤ん坊を育てることができますか?」

カンザキの言葉が雫の心に突き刺さっていくのを、彼女は密に感じていた。今まで何故自分は捨てられたのか、何故両親と離れ離れになったのか疑問に思っていたが、それはカンザキの話で何となくではあるが理解できた。

「そして皐月さんと海奈の搜索を私は命じられて、数ヶ月後に二人を見つけましたよ。お腹の膨らんだ皐月さんと、そんな彼女を庇う海奈を」

「・・・じゃあ、その海奈というのは」

「あなたのお父さんですよ」

お父さん、その言葉を聞いた雫は、顔を伏せるとそのまま自分の太腿を見ていた。気のせいか、視界がぼやけてくるが、カンザキはそれに気づかずに話し続ける。

「私も驚きましたよ。まさか逃走中の二人が子供を作っていた、しかも父親がルギアだったとは・・・」

「・・・・・・」

「普通なら人間とポケモンの間で子供は生まれません。それは当の昔に学会で証明されたことです。しかし、現に皐月さんはルギアの子供を身篭っており、そして無事に出産した」

カンザキはミラーに映る雫を見た。彼女の小さな身体は細かく震えており、太腿に水滴が幾つか付いているのが見えた。

「私はそんな二人を、赤ん坊だったあなたを見て命令に疑問を抱いた。何故殺人の隠蔽を手伝い、産まれたばかりの命を消さなくてはならないのかと。それから私はダミーの死体を用意して、それごと隠れ家を焼き払いました。そして、二人と私は赤ん坊のあなたが無事に成長できるように、あなたを養子に出すことにした」

二人の話についていけず、でも空気を読んで疑問の声を殺していたルークの耳は、隣で泣き声を懸命に殺している音を捉えた。細かく震える身体と力の篭る手が暴れ出さないように懸命に堪えているその人は、目頭が熱くなり、喉が焼けるような感覚を覚えた。

「雫さん、あなたは人間とポケモンのハーフなんですよ。だからこそ人はあなたを忌み嫌い、恐れていた。何せ神の血を受け継いでいるから、言葉では言えない恐怖心があったんですよ」

雫の歯がカチカチと小刻みに音を鳴らす。目から熱い何かが溢れ出す。口からは嗚咽が次々に漏れだし、鼻が詰まるのを自覚していた。懸命にそれを堪えようとする、しかし一向に収まらないしれに、雫はどうするべきかわからずにいた。
育て親の老夫婦は雫が小学生の頃に交通事故で亡くなった。それからは雫は一人ぼっちで生きてきた。老夫婦の息子夫婦には避けられ、中学校に入ると同時に家を追い出された。それからは一人アパートに住み、家賃は生活費は奨学金や老夫婦の遺産の一部でこなしてきた。それでも一人ぼっちであることには変わらず、雫には頼れる人間が誰もいなかった、誰も頼れなかった。当然そんな境遇に陥れた両親の事も恨んでいた。恨んでいた、その筈だが・・・・・

「一人で辛かったでしょう」

違う。

「私も、本当はあなたに両親の下で育って欲しかった」

違う、違う。

「言い訳にしか聞こえないでしょうが、貴方に、そして海奈と皐月さんに死んで欲しくなかった。雫さん、寂しい思いをさせて本当にすみませんでした」

振り向いたカンザキはそう言うと、大きな身体を曲げて俯いた雫に向かって大きく頭を下げた。それは土下座に近く、彼の額は既に運転席と助手席の間の部分に擦りつけられていた。そして、雫の隣に座っているルークもまた、シートの上で正座をすると両手をい突いて、雫に向かって土下座をした。

二人の気持ち、そしてその態度に偽りは無かった。

「しかしこれだけは覚えていてください。恨むなら私を恨んでください、ですが絶対に両親の事を恨まないと、笑って二人に会うと」

違う、違う、違う!

「・・して」

雫は「どうして?」とカンザキに尋ねたつもりであった。しかし、口から出た言葉は雫の意思に反して、言葉になっておらず、まるで舌足らずな赤子が泣いているかのようである。だがその言葉を正確に捉えたカンザキは、額を擦りつけたまま口を開いた。

「・・親友の子供を心配するのに、何か理由がいりますか?」

「・・・・・恨んでいた、ずっとお母さんとお父さんを恨んでいた。なのに・・・・」

「・・・・さっきも言いましたが、人間とポケモンの間に子供が産まれる子事は『ほぼ』ありえないことです。それでもあなたは二人の子供として産まれた」

カンザキはそう言うと、顔を上げた。それに続いてルークもまた顔を上げ、正座のまま雫を見ていた。

「あなたは奇跡のような確立で産まれた。だからこそ二人はあなたを護りたかったんですよ、自分達を犠牲にしても」

どうやら先ほどの土下座の際に、口に埃が入ったらしく、カンザキはそれを指で取り出すと再び口を動かした。

「だから、二人を許してあげてください。そして、あなたはもう一人ではない」

一人ではない。

それを耳にした瞬間、ダムのように塞き止めていた涙が雫の目から溢れ出した。雫は口を覆い、大声を上げて子供のように泣き出した。手に涙と鼻水が付くが気にしない、車内に他の二人の目があるが気にしない。駄々を捏ねる子供のように、産まれたばかりの赤子のように雫は泣いていた。その震える背中をカンザキはあ優しい手付きで撫で、雫の肩をルークが優しく触れていた。それでも泣き足りない雫は、右手でカンザキの肩を掴み、左腕をルークの首に回すと甘えるようにしがみついた。それは、小さい頃に経験できなかった『親に甘える』ことを、中学生になって初めてできたからなのか、それともただ単に甘えたいだけなのか。それはカンザキとルークにはわからないことであった。

「・・・このスーツ、高いんだけどな」

そう呟いて苦笑したカンザキは、濡れた肩に目を向けて雫を見ないようにしていた。

車内に、雫の泣き声が響いている。






「でも、信じられませんよ・・・」

あれから半時近く泣き続けた雫は、ようやく落ち着いて二人を解放した。恥ずかしげに顔を赤くする雫とは裏腹に、カンザキは濡れたスーツを見て笑い、同じくルークも濡れた毛並みを見て笑っていた。その表情は、悪戯をしでかした子供を叱る大人のそれであった。

「信じられなくても、これが真実です」

「でも、こんな生き物が地球上にいるわけがありません!!」

淡々とした口調のカンザキに対して、雫は強い口調で、まるで責めるような勢いでカンザキの耳元で叫んだ。それは先ほどの裏路地から始まり、今に至るまでずっと雫の胸中を占めていた、未知の存在である二人に対する疑問と不安の感情が溢れ出した瞬間であった。存外大きいその声量と言葉は、エンジンを切って鍵を外していたカンザキの鼓膜を思いっ切り殴り飛ばし、また雫の隣に座っている、『こんな』呼ばわりされたルークの肩を落とさせるものだった。はぁはぁ、と顔を真っ赤にしたまま息を整えている雫とは反対に、鼓膜ごと脳を揺さぶられたような錯覚に陥っているカンザキは涙目のまま耳を塞いでいた。そして、そんな二人とは別にルークは落ち込んだ犬のように尻尾を垂らすと、拗ねた子供のように目尻に涙を貯めて外方を向いた。

「なら聞きますが、雫さんは人語をテレパシーで話す動物を見たことがありますか?」

『動物・・・』

カンザキはそう聞き返しながらドアを開けた。そして、雫に続いてカンザキにまで動物呼ばわりされたルークは、目に見えて落ち込むと再び毛布にくるまり、足早に車外の物陰に移動した。

「・・・見たことはありません。でもカンザキさんの話が事実なら、お父さんとお母さんはどこにいるんですか?」

車から降りた雫の眼前に、カンザキの手の平が差し出された。彼は反対の手の人差し指を立てると、静かにするように合図を出した。それを見た雫は直ぐに口を紡ぐと、納得できないといった眼差しをカンザキに送っていた。

「ここは人目に付きますので、雫さんの部屋に移動しませんか?」

そうカンザキは小声で呟くと、親指で彼の肩越しを指さした。そこには、随分と年季のいった古びたアパートが建てられていた。











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