好きなやつと迎える誕生日っちゅうのはなんでこんな楽しみなんやろか。学校へ向かってチャリを漕ぎながらわくわくしている自分に苦笑いをする。まだ朝なのにごっつ暑い。今日は35度を超えそうや。



学校へ着くと夏休み間近ということもあり、女子が固まって何か話をしていた。テニスラケットを置いて椅子に座る。携帯を開こうとした直後に両肩をバンと叩かれた。

「ひーかる!誕生日おめでとう!」
「…声でっか」

両肩の衝撃にびっくりしたのを悟られないように、皮肉をつきながら後ろを向く。

「ええやろ、小さい声よりはでかい声のが」
「お前のはでかすぎるっちゅうねん」

あーあ、朝からこんなん言いたいわけちゃうんやけど。そう思っても口から出るのは止まらないし、しょうがなく付け足すようにまあ、おおきにとだけ言っておく。それでも滅多に聞かない言葉に、目を丸くされた。

「何驚いた顔してんの?」
「え…だって光からおおきになんて、罰ゲームでぜんざい奢ったときに嫌味ったらしく言われたぐらいやもん」
「…もうちょっとあるやろ」

例えば宿題写したとき…ってもアイツの方がやっとらんくてむしろ俺が教えるくらいか。ほんなら何か物もろたとき…って、どっちかと言えばアイツが俺のもんもろてるやん。

「ないない!」
「…確かに」
「でしょ?」
「いやでもそれはお前がそう言われるようなことしてへんやろ」
「えー?」

そう言って眉間にしわを寄せ、悶々と考え込む。意味のわからんとこで頭を使うんやからアホや。…でもそこが可愛えねん。まあ絶対言わんけど。

「…確かに」
「せやろ」
「なら、あたし今日は光にお礼言ってもらうようなことか頑張る!」
「…は?」
「せやから、今日は今までのお礼として1日何でも光の言うこと聞いたるっちゅうこと!」
「例えば?」
「んー…あれしてーとかこれしてーとか…」
「アバウトやな」
「ええの!もーええねん!」

とりあえず何でも!
もうめんどくさきなったのかそう言い放ち、俺の顔を見た。

「何?」
「最初の何かなー思て」
「んじゃちゅうして」
「…はい?」
「あれ、言うこと聞くんやなかったん?」
「…それとこれとは話が別やろ」

目が完全に泳いどる。想定外なのがわかりやすすぎて笑うのを必死に堪える。

「光、口緩んでんで」
「やって自分顔…!」
「しゃあないやん、生まれつきやし!」
「…で?」
「げ」
「……」
「じゃあ…せめて中庭は?」
「えー」
「お願い!」
「…はいはい」

俺がそう言って立ち上がると、さすが光やなとおだてられた。当たり前やろ。誰のためやと思てんねん。

「俺のためやからな」
「わかってますー」
「ほんなら行くで」








「…で?」
「あたし光の…で?がものすごく怖いわ」
「だから言うんや」
「……」

中庭には全く人がおらんかった。それにしても暑い。

「…ほんまに恥ずかしいんやけど!」
「はいはい」
「じゃあどうしたらええ?」
「普通にやったらええやろ」
「普通がわからんの!」

アホ!と言って顔を赤くする。あーやばい。コイツこの暑い中でこの顔やとぶっ倒れる気がする。…あ、これ別に俺からしてもええかな。だって倒れられたら困るしほんま可愛

「…はいやったー!完璧やろ、今の!」

気づいたら唇がくっついて、すぐに離れていってた。

「俺全然感覚なかったんやけど」
「あたしはあったもん」
「……」
「……」
「しゃあないわ、勘弁したる」

一応、おおきにやな