『できたかー?』

そう言ってケーキを作っているあたしのところにくるのはブン太。
実は今日はブン太の誕生日で、ブン太の家でプレゼントとしてケーキを作ってるんだ。
本当はもうできてたりするんだけど…今作ってるのは違うやつというかただあたしがブン太をいじめたいから辛くてまずいケーキを作ってる。
本物は冷蔵庫にこっそり入れてたり。

「もうすこし!」

『はやく食いたいー』

「本当そればっかり。」

苺味だからクリームはピンク。でもごめん、地味に辛子入ってるんだブン太。
あたしはにやける顔を必死で片手で隠していた。

「できたっ!」

実はクリームにいれる砂糖も全部塩だったり。砂糖のとこ全部塩いれちゃった!
やっぱまずいかなー?
でもあたし知らないみたいなー!
ひどすぎるかな?とか思ったりもしたけど…まぁどっきりみたいなかんじで!

『うまそーっ!!』

「でしょ?苺のケーキっ!」

クリームも苺、使っているフルーツも苺。やたらピンクと赤だ。うん、見た目はすごいおいしそう。あたしこれプロになれるんじゃない?

『はやく食おーぜ!』

「はいはい」

ブン太は暇をもてあましていたのか、テーブルには二人分の小皿とフォークが用意されていた。

『じゃあいただきます!』

さっそく切って自分の皿にいれて、ブン太はパクっと辛いケーキを口にいれた。
あ、やばい…笑いそう。たえろ、たえるんだあたし!

「おいし?」

おいしいって言ってもらいたいような期待した目をしてブン太を見た。

『う…うまい』

苦笑いしてるよブン太。辛子に塩だもん、おいしいとか絶対にありえない。
耐えてるのがすごくわかるもん。

「本当に?」

あーあたしってなんて最悪な彼女なんだろ。でもさーおもしろいじゃん?おもしろいのも人間大切だよね!!

『お、おう!』

あははははははは!!
泣きそうな顔してるし!
もーだめ、限界。

「あは、」

『?』

「あははははっ!」

あたしは笑いながら立ち上がって、冷蔵庫から本物のケーキを取り出した。

「本物はこっち。」

『へ?』

「あたしがそんな真剣に作って辛いケーキができるわけないじゃん?」

これでも料理部部長だし。

「それは辛子と塩いりだよ。」

『なんだよそれ!』

「ごめんごめん!なんかちょっといたずらしたくなったの。」

『ありえねぇ。辛かったし、お前はおいしいか聞いてくるし…彼女が作ってくれたもん不味いだなんて言えるわけもねぇしよ…』

「ごめんね?こっちあげるから許して?」

『…』

あたしはブン太の前に本物のケーキを置いた。まだ少し警戒しているのかじっと見つめている。

『大丈夫だよな?』

「もちろん!」

『いただきます。』

もう切るのがめんどくさかったのか、そのままフォークをぶっ刺して食べてる。

「ど?」

『マジうめぇ!やっぱお前のケーキは最高!』

「ありがと」

さっきの許す!って笑顔で言いながらばくばく食べてるし。可愛いなぁ本当に。

「誕生日おめでとう、ブン太。」

『さんきゅ!』



つい可愛いからいじめたくなっちゃうんだよね。