04月20日。

ついにこの日が来た。来てしまった。4月に入ったぐらいからずっと気が気じゃなくて、昨日丸井さんから電話が来た時なんか、本当に死ぬかと思うほど心臓がうるさくて、でも、とうとう来てしまった。丸井さんの、誕生日。とてもおめでたいけれど、また丸井さんと1つ分多く離れてしまうと思うと途端に寂しくなって、無理矢理頭の中から追い出した。



「丸井さん、お誕生おめでとうございます。」

誰かのためだけに盛大に祝うなんて柄じゃないけど、この人の誕生日は俺にとっても大切で、宝物だから。

「さんきゅ!日吉」

照明の落とされた部屋の中。15こ揺らめくローソクの炎の奥で、丸井さんが微笑ってくれた気がした。


「丸井さん、これっ!」

ふっと吹き消されたローソクをケーキから1本1本抜き取る。無数に開いた小さな穴が、俺たちの様で、そんな事を考えてしまった自分が嫌いだ。些細な事で不安になって、びくびく怯えてる。弱い自分が、嫌い。そんな思いを紛らわす様にして差し出した小さな包み。穴の開いたケーキをつついてた丸井さんは顔を上げて、それから目を丸めた。


「これ、って……高かっただろぃ?」
「…いえ、そんな事は」
「嘘」

…ないです。と続くはずだった言葉は丸井さんの一言に遮られた。確かに安くはなかったけれど、丸井さんが喜んでくれればと思って。それなのに、喜んではくれなかったのだろうか…。


「…なぁ、日吉」
「………はい」


ぼそりと吐き出された声は酷く無機質な気がした。空気が凍ってしまったような気さえして、何か丸井さんの気に障るような事を言ってしまったのかと、不安になる。

丸井さんはケーキが好きだ。その中でも苺の乗ったショートケーキは特に好きだ、と言っていたのはまだ記憶に新しい。さっき渡したプレゼントも、この間入ったアクセサリーショップで瞳をキラキラ輝かせながら見ていたから、多分、欲しかったのでは…と。これはあくまで俺の推測でしかないから、もしかしたらあまり必要じゃなかったのかも知れない。そもそも、1年に1度の誕生日を男と祝う事さえ気が進まなかったのでは…と、そこまで考えてしまう始末。ああ、俺はどうすればいい。


「日吉、聞いて」
「、はい…」

いつの間に隣に来ていたのか、さっきより幾らか雰囲気の和らいだ丸井さんは、俺の髪をいじりながら少し悲しそうな顔をした。


「俺ね、要らないよ」
「え、…」
「高いネックレスも、苺のケーキも、何も要らない。」
「……」
「ただ、日吉がそこに居てくれればいい。」
「っ丸井、さ…」


ぎゅうっと抱きしめられ、耳元でそっと囁かれた言葉は甘く甘く俺の中を侵蝕した。




たった一言の魔法をかけて

(思わず涙がこぼれたのは、幸せすぎたせい)



*****
やっぱり丸日でお祝い!
丸井くん、お誕生日おめでとう\(^o^)/私の1番はずっとずっと貴方だけだから!

100420.