捧げもの | ナノ

コタツがうちにやってきたA


「その割にはよく一口で食べたね。」

『…なんだよ、リバースしてほしかったんか?』

「……。」


何とも哀れ、とでも言うような目つき。

ふん、残念だったなヒバリ、私は今コタツと共に存在することによって飛躍的にパワーアップした!!


『どんなに冷たい視線を投げかけられようが、ココからは一歩も動かんぞ!!』

「それってただコタツから出たくないだけでしょ」


するとヒバリは蜜柑の入った籠を自分の方へとたぐり寄せ、そのうちの一つを取り、オレンジ色の皮をむいていく。


『今度は一つでいいよ、ちょーだい。』

「だったら君が僕の隣から取ってってよ。」


…なんて奴だ、私の弱点を確実についてきやがる。

くっ、どうすればいいんだ私!!考えろ私!!


「どうするの?いらないんだったら僕が全部食べるけど。」

『くぅ……あっそうだ!!』


私はごそごそとコタツの中に潜り込み、向かいの方へと移動することにした。

これならコタツの中に入ったまま移動することができ、なおかつ蜜柑も手に入ると。

頭いいな私。天才じゃね?



…あり、潜ったはいいけど暗くて何も見えない。


手探りで少しずつ前へ進んでいけば、何か冷たくて柔らかいものに手が触れた。


『…何これ。』

「僕の足なんだけど。」


そーいやチキンって極度の冷え症なんだっけか。

頭の上あたりでヒバリの声が聞こえる。

なるほど、足を伝っていけばヒバリもとい蜜柑の所へ行けると。ナイスヒバリの足!!

両手でヒバリのズボンの生地に触れながら前へと目指していく。


ゴンッ!!


『いてっ』

おっと頭をぶつけっちまったぜ!!

「無駄な努力ご苦労様」


やっとコタツの布団から顔を出すことに成功し、新しい新鮮な空気を吸えば、なんとも棒読みなセリフと共に最後の一つであろう蜜柑をヒバリは口に含んでいた。


『おいおい、私が欲しいと言っておいたやつがもうないだと?!』

「うん」

『……あ、リバースはしなくていいからね』


君じゃないからそんなことはしない、とムスッとするヒバリ。

何て失礼な奴だろうか。私だって生まれてこのかた蜜柑を相手に差し出すため、意図的にリバースをするなど、したことは一度もない(多分)。


「もう一つあげようか」


ぼすっと彼のワイシャツにわざとしわがよるように顔を埋めれば、私の頭に手をのせてヒバリは言った。


『ちくしょーどーせねェんだろ?最後の一個だったじゃんか、あの蜜柑』

「ちゃんととっておいたから、ホラ口開けて」


おや、どうしたヒバリンよ。今日はやけに素直じゃないか。

私はバッと顔を上に上げた。



『いつもこのくらいしてくれればいいの…―――――!!!』



気が付けば、口をふさがれていた。



蜜柑じゃない―――ヒバリの―――




『……――んうっ』


「いつもこのくらい…続きはなんだっけ?」


やっと離してくれた。

普段よりも楽しそうな顔をするヒバリは……なんか、その…上から目線でう、うざかった!!


『――こんの、蜜柑頭がッ!!!』


シュッと拳を繰り出せば、パシッとたやすく受け止められてしまう。


「顔真っ赤だよ」

『―――っお前っもう帰れっ!!』


シュッ!!パシッ!!


「ヤダ」


両手をつかまれ身動きが取れなくなったところで、彼はズイッと顔を近づけてきた。



「ずっとここから動かないんでしょ」


『っ――!!』



そのドヤ顔にイラッときたので、ヒバリの額にゴンッと頭突きをくらわせてやった。


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