捧げもの | ナノ

コタツがうちにやってきた


冬――正月騒動も終わり(前拍手文参考)並盛神社には私にとっての平穏が舞い戻ってきていた。

ピーンポーン


「お届け物でーす」


ちょっと遅いサタンタさんからのプレゼントが来たようです。(自分の金で買ったやつ)


やっとだよ、

やっとこの時が来たんだ。

宅配の兄ちゃんにハンコを投げつけ、大急ぎでその大きな段ボールを畳の部屋へと引きずっていく。

ちなみに、今来た宅配の兄ちゃんは顔見知りでどんなに遠くからハンコを投げつけても、宅配物に瞬時にハンコを押してくれるというなかなか使える奴だ。

いつものことなので、もう慣れている。最初は戸惑ってたけど。


途中、いろんなところの襖がガコンだのドゴシャァァァだの変な音がしていたが、気にしない。

いつものことだ。もう慣れている。後で怒られるのが目に見えているけどな。


「何の破壊活動だい?」


騒ぎを聞きつけたヒバリがひょっこりと縁側の方から顔を出した。

今さっき到着したのだろうか、頭には白い雪が積もってマフラーもまいたまんま。

指先はしもやけで真っ赤じゃないの。


…ヒバリださっ…いてっ


どうやら心の中を無意識にリピートしていたらしく、頭をはたかれてしまった。


『ふっ、だがしかしそんな行動もとれるのが今の内だヒバリ二等兵。』

「誰が二等兵だって、チワワ」

『見るがいい!!ラビュタの雷をォォォォォ!!!』

「ラピュタね」


私は段ボールの箱の中に手を入れ、中のごつごつとしたアレをがっしりとつかむ。

『うおおおおおっ!!!』

そして、力任せに引っ張り上げた。


ビリビリビリィィィ!!!


包み紙やら発泡スチロールやらが畳の上に舞い落ちる。


「――君がそこを掃除するんだよ。」

『よろしくママン!!!』




でんっ!!


「ワォ」


本当にでんっ!!という効果音が出るほど、畳のスペースを占領するコイツ。

冬の三大神器として私が崇拝し、これさえあれば冬眠している熊どももいそいそとやってくるコイツ。

蜜柑を上に何個か置けば、後光がまぶしいコイツ。



そう――――コタツだ。



『通販で20パーセントオフだったから買っちゃったんだよねー。ホラ、夜は冷え込むし。これさえあれば皆スーパーサイヤ人にもなれちゃうぜ!!』

「怠け者の間違いじゃないの」

『とか言いつつさっそくコタツに潜り込む貴様こそ怠け者。』

「フン」



私もコードをコンセントに差して足をコタツの中へと突っ込んだ。


『んーあったかいねェ』


じんわりと温まっていくコタツのなかで伸びをした。

向かいにいるヒバリをチラリと見れば、蜜柑に手を伸ばしていた。

コタツ買ってよかったなー久々にこんなイイ買い物をしたよ、八年前のモンハン(モンストリアリティーハンティングオンラインゲーム)以来のグッド商品だ。

『あ、ヒバリー蜜柑ちょーだい』

「、ん」


パカリと口を開けば、むけたばかりの甘酸っぱい蜜柑が口の中に押しこまれる。



……まるごと。



『ふふぉい!!ふぁふぇふぁふぁふふぉふぉ』

「口を閉じて食べてからしゃべりなよ」

『…んぐっ、うおい!!誰が丸ごと入れろっつったよ』

「君が欲しいって言ったんでしょ」

『普通ひとつずつだろーが』


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